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侍ジャパンの優勝を予想するブックメーカー 日本から賭けに参加したら罪になる?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:CTK Photo/アフロ)

 海外でスポーツベッティングを主催するブックメーカーが軒並み侍ジャパンのWBC優勝を予想し、オッズもトップだという。では、インターネットを介して日本からこうした賭けに参加した場合、罪に問われるだろうか。

海外に行ってギャンブルをしたら?

 日本では賭博は犯罪とされている。暴力団関係者がプロ野球や高校野球を舞台として主催する野球賭博などがその典型だ。参加者は単純賭博罪だと最高で罰金50万円、常習賭博罪になると最高で懲役3年に処される。主催者には賭博開張図利罪が成立し、最高で懲役5年だ。

 ただ、これらの規定は国内における犯行にしか適用できない。日本人が海外に行ってギャンブルをしても、賭博罪に問われることがないのはそのためだ。海外の主催者も同様である。

 そこで問題となるのが、インターネットを介し、日本の自宅にいながら海外のサーバー上に開設されたスポーツベッティングに参加した場合、賭博罪で処罰できるのか、また、そもそもそうしたスポーツベッティングは違法なのかという点だ。

オンラインカジノは?

 この件について検討する際は、類似の構造を有するオンラインカジノに関する政府答弁が参考となるだろう。すなわち、政府はオンラインカジノを違法なものと断定した上で、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、参加者には賭博罪が成立しうるし、同様に賭博場開張行為の一部が日本国内において行われた場合には、主催者に賭博開張図利罪が成立しうるとしている。

 賭博は賭ける側と賭けさせる側がいなければ成り立たないが、海外の主催者が処罰されないからといって、日本から参加した利用者まで処罰できないわけではない。警察庁も、たとえ海外で「合法的」に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭博を行うことは犯罪であり、現に自宅から賭けに参加した利用者を賭博罪で逮捕、検挙した例もあるという。

 そうすると、ネット上のスポーツベッティングについても、まだ検挙例こそないものの、オンラインカジノと同様に取り扱われることとなるだろう。

現実にはハードルが高い

 とはいえ、社会問題化しているオンラインカジノですら、2019年~21年の賭博罪による検挙件数は年16~18件にすぎないし、いずれも日本国内に設置された店舗から海外のオンラインカジノを利用したケースだった。

 警察の狙いはあくまで日本に軸足を置く主催者の検挙や資金の流れの解明であり、利用者は取調べを受けたとしても起訴猶予により不起訴処分となったり、略式起訴されて20~30万円程度の罰金刑を受けたりするにとどまる。

 それでも「被疑者」として事件化されるわけだし、海外で許可を得た大手ブックメーカーなら安心というわけでもないが、現実問題として立件に至るには証拠収集や立件価値などの面でハードルが高いのも確かだ。

脱税のほうが重い

 むしろ、スポーツベッティングの利用者は、国税局や税務署から目をつけられ、脱税で摘発されたり、申告漏れを指摘される可能性のほうが高い。海外のブックメーカーから振り込まれたものでも、予想が的中した際の払戻金は基本的に「一時所得」として課税の対象となるからだ。

 これをあえて申告していなければ、最高で懲役5年、罰金でも500万円以下に処されるし、無申告加算税なども加わるから、賭博罪よりもはるかにペナルティが重い。税務調査で預金口座の入出金状況などを調べれば簡単に無申告の事実を把握できるし、不正の立証も容易だ。税金の申告にも留意しておく必要があるだろう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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