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ノート(199) 弁護側の反対尋問を想定した検察側による「証人テスト」

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~尋問編(5)

受刑185/384日目

反対尋問に向けて

 この水、木、金曜の3日間は、1時間ほど「シール貼り」の作業を行った程度で、午前、午後とフルに最高検の中村孝検事による取調べを受けた。中でも水、木曜は夜間にまで及んだ。約10日後に大坪さんや佐賀さんの裁判があり、弁護側による反対尋問が予定されていたため、その対策としての「証人テスト」が主眼だった。

 國井君ら若手検事に対する反対尋問では、弁護側による尋問の大半が些末な「供述の変遷」の指摘だったという。「法廷では『○○』と証言しているが、検事の取調べでは『××』と供述していたのではないか?」などと尋ね、法廷での証言と捜査段階における供述調書や担当検事が作成していた「取調べメモ」の記載との食い違いを浮き彫りにするものだ。

 これは、証言全体の信用性を失わせるのが狙いだ。供述の変遷が枝葉ではなく幹部分にあたるほど大きなものだったり、二転三転するなど複数回に及んでいたり、何ら合理的な理由がなかったりすると、裁判所もその証人を疑いの目で見るようになる。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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