コロナで赤字経営、知っておきたい税の救済措置 納税猶予や還付のチャンスも
2020年はコロナショックで飲食業など幅広い業種が赤字経営となるだろう。すでに納めた所得税や法人税を「合法的」に取り戻せるなど、さまざまな救済措置があるのをご存知だろうか。
納税猶予の特例あり
まず、税法には以前から納税猶予の制度がある。ただ、利息に相当する延滞税の全額免除には地震や台風で家が壊れるといった「財産の損失」が必要だ。
そこで、コロナショックを踏まえ、国税庁が特例措置を設けた。
所得税や法人税といった国税について、担保も延滞税もなしで1年間の納税猶予を認めるというものだ。
税務署への申請を要するが、納税猶予を受けるための要件は次のとおりだ。
(1) 2020年2月から2021年1月までに納期限が到来するか、すでに納期限が過ぎているものの未納
(2) 新型コロナ等の影響により、2020年2月以降、1か月以上の期間、売上などが前年同期と比較しておおむね20%以上減少
(3) 一時に納税することが困難
(2)は、イベントや外出の自粛、入国制限の影響がその代表例だが、これらに限らない。
(3)は、今後6か月分の事業資金や生活費、臨時支出などを超える現金・預貯金があるか否かで判断される。
後者が前者を超えていない限り、全額の猶予が認められる。もし超過分があれば、それを差し引いた金額が猶予される。
なお、この特例猶予が適用されない場合でも、現行の猶予制度を使う余地もあるので、あきらめないことだ。
還付の特例あり
また、税法には、すでに納めた所得税や法人税の還付を受けられる制度もある。
一つは、前年度は黒字だったので納税したものの、経営悪化で今年度が赤字になった場合、そのマイナス分を前年度に回して前年度分の納税額を計算し直すことで、払いすぎの税金分が還付されるというものだ。
これもコロナショックを受けて救済のための特例措置が設けられており、個人のほか、資本金10億円以下の法人が利用可能となっている。
ただし、青色申告をしている場合に限られる。
街なかの飲食店などは個人経営の場合が多いだろうが、今期がトータルで赤字であり、前期に青色申告をしていれば、今期分の確定申告に併せて請求手続を行うことで、所得税の還付を受けられる。
災害による損失もOK
また、税法は、経営悪化だけでなく、予期せぬ災害による資産損失の場合でも、今期の経費で引ききれなかった損失分を前期以前に回し、税額の再計算を可能としている。先ほどと同じく、納付済みの所得税や法人税の還付を受けられるというわけだ。
個人だと青色申告が条件であり、さかのぼれるのも前期分までだが、法人であれば白色申告でも利用可能だ。青色法人は前々期分まで、白色法人は前期分までといった違いがあるだけだ。
国税庁は、コロナショックがこの災害にあたるという前提で、具体的に何を損失として評価できるか示すとともに、特例措置も設けた。
例えば、次のようなものが該当するとされている。
● 飲食業者などが仕入れていた食材を廃棄したことによる損失分
● 感染者が確認されたことで廃棄処分した器具や備品などの損失分
● 施設や備品などを消毒するために支出した費用
● 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機などの購入費
● イベントなどの中止によって廃棄せざるを得なくなった商品などの損失分
ただし、休業期間中に支払う人件費や、イベント中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料は対象外だ。
また、外出自粛の要請などで客足が止まって赤字に至った場合は、こちらの制度ではなく、先ほど示した青色申告を条件とする還付制度になるので、注意を要する。
マイナス分の繰越も可能
さらに税法は、今期のマイナス分について、先ほどのような還付だけでなく、翌期以降に繰り越し、それぞれの年の総所得金額などから控除することで、トータルの納税額を減らすことができるシステムも採用している。
例えば、前期の納税額が少なく、今期の損失を前期に回してもなおマイナス分に余りがあれば、翌期や翌々期などに繰り越すことができるというわけだ。
ただし、白色申告の場合、災害に伴う損失分に限られ、経営悪化による赤字分は繰り越せない。
ここでは所得税や法人税について解説したが、ほかにも融資を受ける際の印紙税の非課税など、さまざまな救済措置があるし、住民税にも納税猶予や損失繰越の制度がある。
経営が苦しいようであれば、税理士や最寄りの税務署、自治体の担当者らに相談してみるとよいだろう。(了)