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ノート(145) 裁判所による被告人質問の内容とそこから分かること

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

~裁判編(19)

勾留177日目(続)

貴重な情報源

 審理は、裁判所による被告人質問に移った。当事者である検察・弁護双方にとって、証人尋問や被告人質問における裁判官の質問は貴重な情報源だ。事実や証拠のどこに関心や疑問があり、どのような心証を抱いているのかを読み取るヒントとなるからだ。

 裁判官は来たるべき判決文に何を盛り込むかを考えており、無駄な質問をしないのが一般的だ。当事者からすると、裁判官のちょっとした発言にも神経をすり減らし、一喜一憂することも多い。

 ただし、厳しい糾弾口調だったのに、ふたを開けてみると温情判決だったり、優しい聞き方でも、思いのほか厳しい判決だったりする「タヌキ裁判官」もいるので、注意を要する。

 問題なのは、公平な第三者であることを忘れ、あたかも自らが検察官や弁護人であるかのように、有罪や無罪の方向に証人や被告人をリードしようとする「勘違い裁判官」だろう。

 僕に被告人質問をしたのは、中川博之裁判長と左陪席の植村一仁裁判官の2人だけであり、右陪席の仁藤佳海裁判官は「我関せず」の態度だった。仁藤裁判官は約2週間後に異動することになっており、合議体の中でこれといった役回りを与えられていないからだろうと思われた。

左陪席の質問から

 まず、左陪席の植村裁判官とのやり取りは、次のようなものだった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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