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ノート(122) 被疑者が在宅の取調べを録音しておくことの意義と捜査当局がこれを禁じる法的根拠

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

~整理編(32)

勾留124日目

動作時限

 戸外運動の際、運動場に大きなガラス片が落ちていると思ってよく見たら、薄い氷だった。それだけ寒さが厳しいということだろう。

 それにしても、時が経つのは早い。ついこの前、おせち料理や雑煮を食べたばかりだと思っていたら、もう1月も最終週に入ろうとしていた。

 拘置所内で「動作時限」と呼ばれる1日の行動ルールでは、睡眠時間が約10時間に設定されている。居室内で横にさせていれば逃走や反抗などがなく、刑務官も楽だからだが、活動時間が14時間程度しかないため、1日1日が短く感じるようにもなっていた。

 特捜部の最前線で働いていたころは1日の睡眠時間が数時間ほどだったうえ、やるべきことが無数にあって忙殺の日々だった。

 被疑者や被告人の中には、不摂生な生活をしていたり、心身に病を抱えているような者も多く、健康体になって社会に出ていくためにも、規則正しい生活を送ることは極めて重要だと思われた。

 現に、この週には医務部の看護師が独房にやってきて血圧測定を行ったが、上130・下90であり、4か月前の入所時に上170超・下100超だったのと比べると、劇的に下がってきていた。

宅下げのキャンセル

 この週は、弁護人に対して宅下げをするため、拘置所に預けていた吉川英治「三国志」全8巻が独房に戻ってきた。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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