韓国で同時間帯視聴率1位を記録した話題作、「ミリオネア邸宅殺人事件」。まるで映画『パラサイト 半地下の家族』のような豪邸で謎の死を遂げた大富豪の画家。莫大な遺産と死の真相をめぐる、ワケあり家族の告白の末に暴かれる真実とは――。

本作の主人公のジヘを演じたのは、「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」や「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」などのドラマで異彩を放ち、強烈な印象を残したオ・ナラだ。

ゴージャスなルックスとは裏腹なコミカルで弾むようなキャラクターで、一見重いテーマを軽やかに彩る女優、オ・ナラ。書面による独占インタビューで、日本との縁やドラマの魅力についてたずねた。

――サスペンスのなかに、ブラックなユーモアがちりばめられた「ミリオネア邸宅殺人事件」。オ・ナラさんのキャラクターが存分に生きている作品だと思います。本作に出演しようと思った決め手とは。

初めて台本を読んだ時、自分自身が生き生きとジヘのキャラクターを演じている姿が目に浮かびました。キャラクターたちの個性が際立つ作品なので、楽しい撮影になりそうな予感がしたんです。

――サスペンスを演じるにあたり、参考にした作品はありますか。

特に参考にした作品はありません。「ミリオネア邸宅殺人事件」は過去と現在を行き来しながら、軸となる人物やエピソードも毎回変わり、俳優たちの演技のみならず、犯人が誰なのか、事件がどのように起きたのかを推理する面白さもあります。だから、他の作品を参考にするよりは、本作の台本自体に集中して準備し、演技しました。

韓国語の原題は「十匙一飯」(10人が1匙ずつご飯を加えれば1食分になる、つまり多くの人が力を合わせれば問題を解決できるということ)。「ドラマを見ればタイトルの意味が分かる瞬間があるはず」とオ・ナラ
韓国語の原題は「十匙一飯」(10人が1匙ずつご飯を加えれば1食分になる、つまり多くの人が力を合わせれば問題を解決できるということ)。「ドラマを見ればタイトルの意味が分かる瞬間があるはず」とオ・ナラ

オ・ナラ扮するジヘは、急死する富豪との不倫で娘を生んだ女性だ。遺産目当てで豪邸を訪れるジヘとしっかりものの娘。欲望を隠さないジヘは、至極人間的な存在ともいえる。そんなジヘを、オ・ナラは韓国メディアとのインタビューで「青唐辛子のような人」と表現した。

――「青唐辛子」にこめた意味を教えてください。青唐辛子のようなジヘを演じるうえで、心がけたこととは?

「青唐辛子」と表現した理由は、すごくからいけれどもっと食べたくなる、そんな魅力がジヘというキャラクターに似ていると思ったからです。観る人もきっとハマる、存在感のあるキャラクターだと思いました。

ジヘを演じるうえで気を使ったのは、娘と友だちのような母親としての母性愛です。わたしは未婚なのでプレッシャーを感じたのですが、自分の母親を思い出しながら演技しました。母が私を見つめるまなざし、行動、言葉遣いを参考にしました。

――ジヘは時にコミカルで、時に凄みある姿を見せるなど、多面体の魅力があります。オ・ナラさんとのシンクロ率は何パーセントぐらいでしょうか。どんなところが似ていて、どんなところが似ていないと思いますか

正直に言うと、シンクロ率はほぼゼロに近いです。ジヘのように物欲があったり、目的をもって計画や作戦を立てたりする性格ではありません(笑)。わたしは情や義理を大事にして、人と一緒に仕事をして時間をともにしながら思い出を作るのが好きなんです。

――劇中ではお互いをけん制し合う緊張感があふれていました。若手から年配の俳優さんまで幅広い世代との共演でしたが、撮影中の現場の雰囲気はいかがでしたか?

最後のシナリオが完成するまで誰が事件のわなを仕掛けたのか、誰が犯人なのか、出演者たちには教えられないまま、撮影が進められました。ドラマで誰が犯人なのか疑いをかけあうように、俳優同士が集まればお互いを疑って推理して盛り上がりました。だから俳優たちの演技も自然になったのだと思います。

撮影中はずっとみんなでセットの家の中にいました。ドラマは画伯のバースデーパーティーに9人が一堂に会すところから始まりますが、本当に家族がお祝いのために集まっているような雰囲気でした。

ある日、みんなに料理を作ってあげたいと思いつき、韓国で誰もが好きなトッポッキを準備しました。ところが、からく作りすぎて、からいものが食べられないチェ・ギュジンさんの顔が真っ赤になり、水を3リットルも飲んでしまって。それでも全部食べてくれて、ありがたかったです。いい思い出ができました。

プライベートでは20年間結婚せずに付き合っているパートナーがいる。「彼は私の仕事を応援してくれる、いつも頼もしい味方で、エネルギーと力を得る原動力です」
プライベートでは20年間結婚せずに付き合っているパートナーがいる。「彼は私の仕事を応援してくれる、いつも頼もしい味方で、エネルギーと力を得る原動力です」

俳優生活24年。キャリアの原点はミュージカルだ。大学では舞踊、大学院ではミュージカルを専攻し、1996年からソウル芸術団に所属。その後、2001年からは日本の劇団四季に所属していたこともある。

幼いころからよく才能があると言われました。悩んだ末にクラシックバレエを選んだのですが、なぜか満たされないままでした。大学在学中に偶然ミュージカルを見て、いつのまにかその魅力にどっぷりハマっていました。まさに運命的な出会いでした。

劇団四季は、初めて韓国の俳優を対象にオーディションを行ったときに入団しました。四季のシステムは、世界と比べても完璧だと思います。四季での経験を通じて多くのことを学び、素晴らしい舞台に立ったというプライドを持っています。孤独な外国生活をサポートしてくださった方たちもたくさんいて、今も連絡を取っています。

――さまざまなジャンルの作品に出演されていますが、作品を選ぶ時に、これだけは譲れないと思うご自身のポリシーとは。

キャラクターの過去について分析します。そのキャラクターはどのような環境で、どんな半生を送ってきたのか。過去が重要だと思うんです。善人役であれ悪人役であれ、どのような理由で人物が作られたのか、その部分がよく見えて描かれているかを考慮します。とはいえ、作品との出会いは運命ですね。わたしが選ぶというよりも、運命のように作品がやってくる。そんな感じがします。

――この四半世紀で、韓国のドラマは世界へ大きく飛躍しました。業界を俳優として内側から見つめてきたオ・ナラさんが考える、韓国ドラマが変わった理由、そして世界の人々を夢中にさせる魅力とは?

韓国ならではの「情」が、世界中で理解され、認められるようになったのではないでしょうか。昔から韓国のドラマには「情」がありました。人々のあたたかさ、癒し、愛する心。それが世界に伝わったのだと思います。

「ミリオネア邸宅殺人事件」

写真クレジットはすべて (c)2020MBC