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「横浜GGプロジェクト」は、eスポーツを活用した地域コミュニティ活性化のロールモデルになり得るか…?

黒川文雄メディアコンテンツ研究家/黒川塾主宰/ジャーナリスト
横浜GGプロジェクト構成メンバーによる記念撮影 撮影筆者

 5月19日、横浜みなとみらい21地区に本社を構える、株式会社ピーシーデポコーポレーションにおいて、「横浜GGプロジェクト」の発足発表会が開催されました。

 「横浜GGプロジェクト」とは、eスポーツを活用した地域コミュニティの拡充を行うプロジェクトで、構成法人は、株式会社VARREL(東京都渋谷区 代表取締役 鈴木文雄 以下 VARREL)、株式会社ピーシーデポコーポレーション(神奈川県横浜市 代表取締役社長執行役員 野島隆久 以下 ピーシーデポ)、京浜急行電鉄株式会社(神奈川県横浜市 取締役社長 川俣幸宏 以下 京急電鉄)の3社による合同プロジェクトであり、神奈川県横浜市を中心に、eスポーツ拠点や、関連する複合施設を開設し、eスポーツに伴うコミュニティ活動を行うことにより地域社会の活性化を目指すというものです。

VARREL 代表取締役 鈴木文雄氏 撮影筆者
VARREL 代表取締役 鈴木文雄氏 撮影筆者

 なお、GGとは「Good Game」の略語で、ゲームを終えたあとに、プレイヤー同士が双方の健闘を称えあう意味で「(ゲーム)楽しかったよ」、「今日もよい一日を」という主旨で「GG」というワードを送り合うことに由来しています。おそらく、日常における挨拶「Good Day」のように、「よい時間を共有した」、「よい時間を共有しよう」という意味合いがあります。

 さて、「横浜GGプロジェクト」の具体的な活動ですが、eスポーツチーム、VARRELは活動拠点、練習拠点を横浜市内に移設し活動を行うことをきっかけに、3社が共同して行う内容は以下のようなものと定義付けられています。

8・駅構内等を活用したeスポーツ複合拠点開設(ゲーミング拠点、教室、デジタルライフサポートなど)

2・地域交流拠点を活用した高齢者向け体験会の開催、eスポーツ学習施設などの開業

3・高齢者、障害者を含む雇用の創出

4・部活動支援を通じた市場拡大、優秀な選手の発掘育成

5・地域セミナーの共同開催(eスポーツとの正しい向き合い方など)

6・eスポーツを活用した引きこもり支援事業

7・eスポーツを活用した地域コミュニティの拡充

8・選手や選手を目指す若者向けゲーミングハウス(シェアハウス)の設置

9・選手のセカンドキャリア支援

10・プラットフォーム参画企業の拡充

11・横濱ゲートタワー(ピーシーデポ本社と同じビル)に開設予定のeスポーツ拠点、スクールを活用した活性化企画の実施

12・京急沿線eスポーツ大会(カップ戦、リーグ戦)の共同開催、沿線広域連携

 …など、多岐にわたる活動を前提にしています。

 eスポーツに詳しい方ならば、既にご存じかと思いますが、VARRELは、eスポーツの各種タイトルで輝かしい実績を残しており、最近ではPUBG MOBILE部門が、2023年9月に中国の杭州で開催されるアジア最大のスポーツの祭典「第19回アジア競技大会」の日本代表に内定したことも記憶に新しいことと思います。

 ピーシーデポは、各家庭にひとりひとりのデジタルライフプランナーという位置づけの「デジタル担当」を置くというコンセプトでサービス拡充を行い、その一環として、事業シナジーの強いeスポーツに着目、eスポーツ教室など、高齢者支援、引きこもり支援、セカンドキャリア創出など地域に根差した活動を行うものです。

 京急は沿線の活性化、駅構内の施設拡充を想定しているものと思われます。鉄道系で、同様のサービスとしては、JR東日本のフィットネスジム事業「JEXER(ジェクサー)」が展開する、エキナカ初の常設eスポーツ施設の「ジェクサーeスポーツステーション」に類似したものになるのではないかと思われます。

 これら展開の意思表示と、共同活動のため、新たに準備されたVARRELのユニフォームの紹介も行われました。

VARREL 新ユニフォーム 前面 協賛スポンサー、ならびに今回の各社のロゴが映える 撮影筆者
VARREL 新ユニフォーム 前面 協賛スポンサー、ならびに今回の各社のロゴが映える 撮影筆者

VARREL 新ユニフォーム 後面 撮影筆者
VARREL 新ユニフォーム 後面 撮影筆者

(以下SWELL)代表取締役の菅野辰彦氏、横浜マリノス 一般社団法人F・マリノススポーツクラブ(以下マリノス)サステナブルパートナー室の武田裕迪氏とともに「地域密着型eスポーツチームの展望と課題」について意見が交わされました。

 前半の記者発表と重なる部分は略しますが、神奈川県横浜市、横須賀市に縁の深い、SWELLとして会社を運営している菅野氏からは、eスポーツチーム「BC SWELL」のeスポーツ活動拠点として、横浜駅直結の商業ビル、アソビル(ASOBULID)内に、コミュニケーション施設「BARReL」を保有していることもあり、地域に根差したeスポーツ活動を、今日の発表を基にさらに活性化していく表明が成されました。

BARReL資料より抜粋 ASOBUILD展開中
BARReL資料より抜粋 ASOBUILD展開中

 一方のマリノスの武田氏からは、従来のeスポーツ活動以外に、「現時点で、明確な展開案は無いが、ここにいるメンバーや企業さんたちと一緒に『桃鉄(桃太郎電鉄)』からやってみたい」と語りました。これは筆者としては、非常に現実的かつ、同時に地域コミュニケーションを図るうえでわかりやすい展開事例だと思います。

 高度なテクニックや駆け引きを要するeスポーツも素晴らしいのですが、このようなカジュアルなジャンルも並行して展開して頂きたいと感じました。

マリノス武田氏の資料より抜粋
マリノス武田氏の資料より抜粋

 菅野氏、武田氏、お二人の地域に根差した活動を、eスポーツというジャンルにとらわれず、コミュニケーションの活性化を目標にして、地域が一体となって共同で何かを始めることに意義があるという主旨は注目すべきものであると感じました。

 とかく、「お題」先行になりがちな、このような発表や組成ですが、まずは参加しているメンバーや組織体ができることからコツコツと止めずに積み上げていくことが重要で、10年先を見据えた展開は、その小さな一歩の積み重ねから始まるのではないでしょうか。

 この展開が、各地で展開可能な、eスポーツをベースにした、よきロールモデルになることを期待しています。 

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メディアコンテンツ研究家/黒川塾主宰/ジャーナリスト

黒川文雄 メディアコンテンツ研究家/黒川塾主宰/株式会社ジェミニエンタテインメント代表 アポロン音楽工業、ギャガ、セガ、デジキューブを経て、デックスエンタテインメント創業、ブシロード、コナミデジタルエンタテインメント、NHN Japan (現在のLINE、NHN PlayArt)などでゲームビジネスに携わる。現在はエンタテインメント関連企業を中心にコンサルティング業務を行うとともに、精力的に取材活動も行う。2019年に書籍「プロゲーマー、業界のしくみからお金の話まで eスポーツのすべてがわかる本」を上梓、重版出来。エンタテインメント系勉強会の黒川塾を主宰し「オンラインサロン黒川塾」も展開中。

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