Yahoo!ニュース

ウサイン・ボルト、弓引きポーズの商標を本人名義で出願

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:97552042号出願書類

「”弓引きポーズ”商標申請 陸上ボルトさんロゴで使用」という記事を読みました。「陸上男子短距離の元スター選手、ウサイン・ボルトさんが、五輪などで勝利した際に見せた”弓引きポーズ”をロゴ使用するため、米特許商標庁に商標申請した。」ということだそうです。

出願番号は97552042(タイトル画像参照)、指定商品は、メガネ、時計、バッグ類、衣服、ゲーム、エンターテインメントサービス、レストラン等、様々です。なお、ボルト氏がこのマークの出願を行ったのは実は今回が初めてではなく、2012年にバッグ類を指定して商標登録(4177904)を行っており、有効に権利が存続しています。

マイケル・ジョーダンのAir Jordanマーク等もそうですが、このマークには相当の顧客吸引力があると思われますので、商標登録してグッズ展開するのは当然と言えます。

さて、通常、グッズ展開のために商標登録出願する際は、権利の一元管理のために、マネジメント会社や商品メーカーの名義で行うことが通常だと思います(Air JordanマークはNike名義です)。しかし、ボルト氏の場合、今回の出願だけではなく、過去の出願においても、Usain Boltの個人名義になっています。もちろん、ボルト氏には専属のマネジメント事務所があります。なぜ、このようなやり方を取るのかは不明です。過去に、商標権関連でもめた(あるいは、もめた人が身近にいた)ので、商標権だけは自分で押さえておきたいという考えなのかもしれません。

一般に、本人名義で出願した場合の問題として「自宅バレ」(および、このケースでは関係ないですが「本名バレ」)がありますが、この出願書類の住所でGoogle Mapで検索するとジャマイカのキングストン市の住宅街のアパートの一室のようであり、どう見てもボルト氏の自宅ではありません。さすがに、事務所または弁護士等の住所を使っているのでしょう。

なお、ひょっとしてジャマイカの法律または習慣的に何か特別な事情があるのかもと思い、別のジャマイカ人の有名人である、レゲエ・ミュージシャン、ジミー・クリフの関連商標についても調べてみました(ボブ・マーリーは1981年に亡くなっており本人名義での出願はありえないため)が、普通にマネジメント事務所が出願人になっていました。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔のIT特許分析レポート

税込880円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

栗原潔の最近の記事