アディダスが日本において他社の2本線商標の登録取消に失敗

出典:特許情報プラットフォーム

靴の横に3本線が引いてあれば、ほとんど誰もがアディダスの商品だと思うでしょう。3本線マークは著名商標としての地位を確立していると思います。しかし、アディダスの3本線商標に関する主張が常に裁判所や特許庁によって認められるわけではありません。欧州において(位置や場所を限定しない)3本線商標が無効になった件については既に書いています。

愛読サイトTHE FASHION LAWの記事で知りましたが、独アディダス社が日本において丸紅フットウェアを権利者とし、靴類等を指定商品とする2本線の図形商標(タイトル画像参照)(登録6016240号)の取消に失敗したようです。8月30日に発行された決定文はこちらです(特許情報プラットフォームは決定文に直リンが張れないので、アスタミューゼ株式会社が提供するサイトにリンクを張らせて頂きました)。

アディダスの主張は「3本線商標」の著名性の程度がきわめて高く、かつ、2本線商標であっても配色によっては「3本線商標」と紛らわしいことがあり、需要者(一般消費者)が混同する可能性が高いため、商標法4条1項15号(他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標)、および、世界的に著名な3本線商標の信用力、顧客吸引力にフリーライドする不正な目的で採択されたことで、4条1項7号(公序良俗違反)に該当するというものです。

しかし、特許庁は「3本線商標」の著名性の高さについては肯定したものの、以下のとおり、アディダスの主張を認めませんでした。

例えば,スポーツシューズの側面に,様々な線状の図形を商標として付すことは一般に行われており,スポーツシューズを購入する際,需要者は側面のデザインに注意を払うことは普通のことといえる。また,引用商標は,「3本線商標」として周知著名なものであって,需要者は商標を構成する図形の本数に着目するものであり,2本線の商標とは明らかに異なるものと認識することから,本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品とが関連性が高く,かつ,その需要者を共通にする場合があることを考慮しても,本件商標に接する需要者が,引用商標を想起又は連想することはないというのが相当である。

今後、アディダスは無効審判を請求することが可能です(異議申立の維持決定には取消訴訟できないため)。ただ、私見ですが、「3本線商標」の著名性にもとづいて、2本線商標の登録を禁止するのはちょっと無理筋ではないかと思います。上記の決定文にもあるように消費者は3本線だからこそアディダスと認識しているのであって、2本線の靴をアディダスと間違えて購入するということは通常ないからです。ただ、実際の商品で配色によって2本線を3本線に見せてしまうような巧妙な摸倣があれば、不正競争防止法によって権利行使できる可能性はあるとは思いますが(こちらは登録の可否を問う話ではなく販売差止・損害賠償を求める話です)。