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中国における「羽生結弦」商標登録出願問題について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:中国商標局データベース

「中国で”羽生結弦”が商標登録申請 所属のANA”状況は把握している”」というニュースがありました。全然関係ない企業が「羽生結弦」を商標登録出願しているという中国商標あるあるです。

実際、中国商標局のデータベースでサーチしてみると7件ヒットしました(タイトル画像参照)。上の今年の4月出願分の2件が今回問題になっている出願であり、まだ審査中です。しかし、過去の出願5件はいずれも拒絶になっています。さすがに中国でも関係ない人による著名商標の出願は拒絶の対象となり、言うまでもなく羽生結弦選手は中国でも著名なので拒絶されたものと思われます(中国では日本と異なり第三者は拒絶された理由を閲覧できないのですが、ほぼ確実と言ってよいでしょう)。

ということで、今年の4月に出願された2件も同様の理由で拒絶されるものと思われます。中国の勝手出願でやっかいなのは、日本では有名だが、中国ではまだ有名でないという段階で中国において抜け駆け的に出願されてしまうパターン(たとえば、無印良品の事例等がこれに相当します(参考記事))。羽生結弦選手は中国でも超有名ですのでこのパターンには当てはまりません。

ところで、この件についてツイッターで調べていたところ、ファンと思われる方の投稿から、羽生結弦選手の姉(と思われる人)の名前が既に商標登録されていることがわかりました。この方は一般人であって著名性はないので登録されてしまうのはしょうがないのですが、出願人はいったいどういうつもりなのでしょうか?(それとも単に偶然の一致なのでしょうか?)こちらは2月に登録されてしまっているので、取り消したいのであれば無効審判を請求するしかありません。

朗報としては、中国商標法が今年の11月に改正され、「使用を目的としない悪意の商標登録出願」が拒絶、取消、無効の対象になりますので、今回の件に限らず、勝手出願対応は以前よりも容易になるものと思われます。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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