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ヘイリー・ビーバー、商標登録には夫ジャスティンの協力が必要

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:Splash/アフロ)

「ヘイリー・ビーバー、夫ジャスティンの名前が原因でコスメラインの商標登録できず」というニュースがありました。

ジャスティン・ビーバーの嫁であるモデルのヘイリー・ボールドウィンが米国特許商標庁(USPTO)に出願した、"BEAUTY BIEBER"という商標登録出願(指定商品は化粧品類)が、夫による"JUSTIN BIEBER"という登録(指定商品は化粧品類等)と類似すること等を理由に暫定的に拒絶されたという話です。

上記記事タイトルの「商標登録できず」、記事中の「却下された」は間違いで、6カ月以内に意見書等で対応すれば登録できる可能性は十分にあります。なお、類似の判断において、"BEAUTY BIEBER"のBEAUTYの部分は指定商標に対して記述的に過ぎないので、あってもなくても同じとして扱われます。

日本で同様な状況になった場合の裏技として、商標登録出願に関する権利をいったん先登録者に名義変更し、登録してもらってから(先登録との類似を理由に拒絶されるのは他人の先登録なのであって、自分の先登録と類似する分には問題ないため)、再度自分に名義を戻してもらう、通称、「アサインバック」という手法があります。

米国の場合は、商標権の譲渡は事業と共に行なわなければならないので、「アサインバック」は困難ですが、先登録者の同意書をもらえれば、類似した商標でも登録され得ます(100%確実ではないですが、今回のケースでは大丈夫と思われます)。要は、夫の協力さえあれば登録されるということで、よほど夫婦仲が険悪でない限り、登録可能でしょう。日本ではこの「同意書」の制度はないですが、米国をはじめとして多くの国で採用されています。

余談ですが、"JUSTIN BIEBER"が実際に商標として使用されているかどうか、ちょっと気になりましたが、少なくとも香水については使用が確認できました。さらに余談ですが、" JUSTIN BEAVER "なる商標登録出願が個人により米国で行なわれていましたが、著名人であるJustin Bieberと紛らわしいことを理由にあっさりと拒絶されています。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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