韓国のマジンガーZ類似キャラ裁判における二次的著作物の考え方について

(著者作成)

「テコンVはマジンガーZのパクりではない 韓国地裁判断」というニュースがありました。見出しだけ見ると勘違いしそうですが、この裁判は、日本のマジンガーZの著作権者が韓国企業を訴えたという話ではなく、韓国のテコンVなるキャラクターの作品を作っている企業が無許可でその玩具を製造・販売している別の韓国企業を訴えたという裁判です。

テコンVの玩具の販売業者が「テコンVはマジンガーZやグレートマジンガーの模倣だから著作権保護の対象にならない」と抗弁したのに対して、裁判所がそれを一蹴する判決をしたということになります。

他人の著作物を翻案して作られた二次的著作物の利用(複製・販売等々)に対しては、原著作物の著作権者だけではなく、その二次的著作物の著作権者も権利行使できます。これには、その二次的著作物が原著作物の権利者の許可を得たものであるかどうかは関係ありません(タイトル画像参照)。

日本でも(おそらくほとんどの国で)同様ですが、韓国著作権法にも以下の明文の規定があります。

第5条 (二次的著作物)

(1)   原著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映像製作又はその他の方法により作成した創作物(以下、「二次的著作物」という。)は、独立した著作物として保護される。

なので、テコンVがマジンガーZの著作権を侵害するかどうかは、この裁判の結果には直接関係ないことになります(テコンVがマジンガーZとまったく同一(テコンVに独自の創作的表現がない)となれば話は別ですが)。

ところで、朝日新聞の記事では、判決について「『外観上、マジンガーZと明確な違いがある』と退けた。」と引用してますが、中央日報日本語版の記事では「『テコンVはマジンガー等と区別される独立的著作物か、これを変形・脚色した2次的著作物に該当すると見なければならない』と判断した。」と微妙にニュアンスの違いがあります。

仮に中央日報日本語版の方が正しいとすると「テコンVはマジンガーZのパクりではない」というのはちょっと言い過ぎで、「パクリかもしれないけど、仮にそうであってもそれは判決には影響しない」と言うべきでしょう。

ところで、日本においても、版権物の同人誌などの二次創作物を「パクリなので著作権が発生していない」という誤った前提の元に無許可で配信しているサイトがあるようですが(参考記事)、前述のとおり、違法な二次創作であっても、勝手に利用された場合に二次創作者が権利行使することは可能です。後ろめたいので訴えにくい、大騒ぎになって目立つことで原作品の作者から自分が訴えられたら困るという要素はあるかもしれませんが、法律的には無許諾の二次的著作物だから著作権が発生しないということはありません。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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