オープンソースに関わる商標権問題について

出典:特許情報プラットフォーム

OSDN株式会社が「オープンソース商標についての解説と不使用取消審判への対応のお願い」というページを公開して話題になっています。同社が権利者となっている「オープンソース/OPENSOURCE」なる登録商標(4553488号) に不使用取消審判が請求されたという話です。

不使用取消審判とは3年以上使用されていない商標を事後的に取り消すための制度です。キリンラーメンの件でも出てきました。

請求人は、株式会社OPENSAUCEなる企業です。レシピ情報の共有サイト等を主な事業とするスタートアップ企業だそうです(関連記事)。当然ながら、「オープンソース」のもじりの社名でしょう。

OPENSAUCE社のサイトにも経緯が載っていますが、同社がOPENSAUCEを将来の事業展開を見越して広範囲の商標登録出願したところ、OSDN株式会社の上記先登録と類似であるとして拒絶理由通知を受けたので、問題ない区分のみを分割して登録、残りを登録に導くために、先登録に不使用取消審判を請求したという流れです。サイトの説明にあるとおり、商標の世界では日常的に行なわれている行為です。仮に、使っていない商標を永遠に独占することが許されてしまうならそちらの方が不公平でしょう。

なお、ITの世界では「オープンソース」は普通名称化していますので、誰であっても商標登録することは不可能です(たとえば、「オープンソースコンサルタント」等も同様)。(追記:書き忘れてましたが「オープンソース」を普通名称として使うことに商標権を権利行使することもできません。たとえば、普通にオープンソース・ソフトウェアの解説を行なう「オープンソース・セミナー」の実施がOPENSAUCEの商標権を侵害することはありません。)問題になるのは、ITと関係ない分野(たとえば、服飾品)で「オープンソース」をブランド名して使用する場合です(実際にそういうケースはあまり見聞きしませんが可能性としてはあります)。

さて、不使用取消を免れるためには、商標権者自身、あるいは、そのライセンサー(通常使用権者、専用使用権者)による使用を立証しなければなりません。仮に第三者が使用していたとしてもそれは関係ありませんので、このままいくとOSDN株式会社の商標は取消になってしまうと思われます。

仮に第三者による「オープンソース/OPENSOURCE」商標の使用が明らかになり、かつ、商標権者が「誰でも自由に使ってよい」と公言しているのに従って使用していたとして、使用に関する合意があるので一種のライセンサーによる使用であるとの主張が可能かどうかは興味深いですが、少なくとも、特許庁の実務では、ライセンス関係は契約書等の書面で立証しなければならないとされていますのでちょっと厳しいと思います。

過去記事で、特定の言葉を誰でも商標として使える、いわば商標のパブリックドメイン的状態を作り出すためには、誰かが登録して、権利行使しないことで自由に使ってもらうしかないと書きましたが、これにも穴があって、3年間使用していないと今回のように第三者に不使用取消審判を請求される可能性があります。これをどうしても避けたいのであれば、3年おきに出願し直すしかないでしょう(なお、細かい話ですが、既に登録されているのとまったく同じ出願を繰り返すと、商標法の精神に反するという変な理由により拒絶になってしまいます(精神拒絶と呼ばれます)ので注意が必要です)。

特許であれば、発明を公開してしまえば、新規性が失われますので、誰もその発明を特許化することはできなくなり自由に使えるようになります。著作権であれば創作した人が「著作権を放棄する」と宣言すれば同じく誰もが自由に使えるようになります。これに対して商標は特定の創作者に帰属する創作物ではなく、誰もが自社の営業標識として選べる選択物なので特性が異なります。

余談ですが、この記事を書くための調べ物中に「オープンソース焼きそば」が商標登録されていることを知りました。NRIが2008年にLinuxWorldでノベルティとして使用したのが最初であると理解していますが、この登録の権利者はNRIではありません。この辺の事情がどうなっているのかはわかりません。