IOCが最近になって「五輪」を商標登録出願した理由

(写真:ロイター/アフロ)

「IOCが『五輪』を商標出願 便乗商法の抑止狙う 『誰もが使えるもの』指摘も」というニュースがありました。

確かに、商願2017-166105として2017年12月19日に出願されていました(審査待ち状態です)。全区分を指定した広範囲の出願です。

言うまでもなく、「オリンピック」、「OLYMPIC」、五輪マーク、公式エンブレム(および最終候補作)、公式マスコット(および最終候補作)、その他のキャッチフレーズ(TEAM JAPAN等)は、既にIOCまたは日本オリンピック委員会により出願・登録されています。

これも言うまでもありませんが、このようにオリンピック主催団体が手広く商標権を押さえておくのは、公式スポンサー以外による便乗商法、いわゆるアンブッシュ・マーケティングを防ぐためです。その意味では「五輪」が最近まで出願されていなかったのはちょっと意外でした。「五輪」の出願人が日本オリンピック委員会ではなくIOCである理由は不明です(単に予算配分の問題と思いますが)。

商標権の効力は登録商標の類似範囲に及びますので、仮に「五輪」が商標登録されていない状態で「五輪」が勝手に使われた場合でも「オリンピック」の類似範囲として商標権を行使できる可能性は十分にありますし、同様に、商標登録がなくても不正競争防止法により権利行使できる可能性も十分にありますが、念には念を入れてということでしょう。

これに関連した話として、少し前に「『大会に水差す』…五輪便乗商法、過剰規制せず」というニュースがありました。

ロンドン五輪等、最近のオリンピック大会ではオリンピックのためだけに特別な法律を制定して、便乗商標法に対して商標法等の現行法よりさらに厳しい規制を行なってきました(参照過去ブログ:ロンドン五輪での便乗商法禁止はこうなっていた【やや衝撃】)。たとえば、商標として類似する言葉に限らず、オリンピックを連想させる言葉(game、2012、gold、summer等)の組み合わせ)自体の使用も禁止するというものです。しかし、日本では、

「必要以上の法規制は、大会の盛り上がりに水を差す」として、特別措置法の制定を見送る方針を固めた。近年の五輪開催国は知的財産を保護する特別な立法措置を取ってきたが、商標法や不正競争防止法など現行法で対応する構えだ。

という方向性になったようです。この方向性と合わせて、念のために「五輪」を登録商標として押さえるということになったのではないかと思います。

公式グッズの偽物の製造・販売を禁止するのは当然ですが、たとえば、地元商店街による「日本応援セール」を禁止するなんてことをやっていたのではオリンピックを盛り上げる上で逆効果なので、これは賢明な判断だと思います。

ところで、某掲示板等で「五輪」が商標登録されると「五輪真弓」はどうなるのかといった意見も聞かれるので「ネタにマジレス」で回答しておくと、商標法には「自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標」には商標権が及ばないとの規定(26条1項)があるので、本人による使用であれば仮に商標的使用であっても問題ありません。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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