アマゾンのショールーミング禁止特許の意味について

(写真:ロイター/アフロ)

「アマゾン、店内で他社の価格をチェックしづらくする特許を取得」というニュースがありました。いわゆる「ショールーミング」を防ぐ技術の特許です。なお、単なる公開ではなく特許化です。特許番号は9665881、発明の名称は”PHYSICAL STORE ONLINE SHOPPING CONTROL”’(物理店舗のオンラインショッピングのコントロール)です。基本的アイデアは店内の無線LANアクセススポットでURLをチェックし、競合するウェブサイトへのアクセスであれば接続できないようにするというものです。

「ショールーミング」とは、店舗で商品を検討中にスマホでウェブサイト(典型的にはアマゾン)上の価格をチェックしてウェブサイトの方が安ければそっちから買ってしまうという行動です。小売店としてみれば費用をかけて現物を展示しているのに結局ウェブで買い物されてしまっては意味がないので大変困った話です。

最近のアマゾンによる米大手スーパーチェーンのホールフーズの買収に関連づけたくなりますが、この特許の出願は2012年のことなので、長期戦略としてアマゾンが物理店舗戦略を強化しているという意味では関係ないことはないですが、タイミングが一致したのは偶然です。

また、上記記事は、アマゾンがこの特許技術を自社の物理店舗でどう使うかという点が中心になっていますが、現実にはアマゾンがこの特許技術を他社(たとえば、ベストバイなどの家電量販店)で使わせないようにするという戦術の一環と考えた方が自然です。特許権の本質は禁止権です。

つまり、他社の店舗が店内WiFi経由でアマゾンのウェブサイトでで家電の値段をチェックできないようブロック(フィルタリング)していたとすると、この特許権を使って、そのようなブロックを行なえないようにすること(つまり、ショールーミングを禁止することを禁止すること)を目指したということです。

とは言え、本特許は出願時点の広い範囲から補正によりかなり限定されています(小売店舗の価格とウェブサイトでの価格の差が閾値以上であればどーしたこーしたという条件が付加されています)ので特別な処理をせず、たとえば、単にアマゾンのドメインはすべて無条件にアクセスをブロックするというようなシンプルなやり方であればこの特許権は行使できません。

ということで、本特許は現実のビジネスにはほとんど影響を与えないと言えると思います。そもそも、言うまでもないですが、セルラー回線経由でのウェブ価格チェックは、特許権のあるなし以前に技術的にブロックできない(仮にできたとしても通信関連の法律違反になる)ので関係ありません。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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