「『商品名似てる』ヨネックスを提訴 ゴルフ用品メーカー」という記事を読みました。TOUR Gという商標の商標権を有するゴルフ用品メーカー、ツアージーが、VCORE TOUR Gという名称のテニスラケットを販売するスポーツ用品大手ヨネックスを商標権侵害で訴えたという話です。

TOUR Gは識別力がある部分と思いますし、ツアージー社の登録商標(5307318号(文字)と5731112号(ロゴ))は「運動用具」をカバーしていることから、報道されていない特別の事情があるのでない限り、ヨネックス側の分が悪いと思います。

別の記事ですと、

ツアー・ジーの代理人弁護士は「ヨネックス社は、商標登録されているかどうかの調査を十分に行わなかったのではないか」とみている。

という発言があります。ブランドにはうるさいはずのスポーツ用品メーカーが商標調査を十分に行なわなかったというケースは想定しがたいですが、試しに、自分も担当者のつもりで検索して見ました。

商標調査は専門業者にお任せすることもありますが、国内の文字商標であれば、特許庁(厳密には関連独立行政法人)の公式サイトJ-PlatPatを使うのが通常です(特許事務所に調査を依頼しても結局J-PlatPatを使うことが多いと思います)。当該ラケット販売開始当時はIPDL(特許電子図書館)というシステムだったのですが、バックエンドシステムは変わっていないと思うので、たぶん同じ挙動のはずです。

まず、J-PlatPatの「商標出願・登録情報」の画面で「商標(検索用)」の欄にTOUR Gと入れても(右側の検索方式をANDにするのを忘れないように)ヒットしません(IPDL時代は半角で入力すると「半角で入力していませんか?全角で入力してください」とアホなエラー・メッセージが出てたと思いますがさすがに自動変換してくれるようになりました)。

さらに、TOUR単独で入力してもヒットしません(TOUR COMPANION等はヒットするにもかかわらずです)。ワイルドカードを使ってTOUR?だとヒットします。また、ブランクなしで、TOURGだとヒットします。デリミターとしてのブランクの処理がちょっとおかしいのではないかと思います。

さらに読み方(称呼)で検索しようと、「称呼(単純文字列検索)」の欄に"ツアージー"を入力してもヒットしません。商標の公報の方を見ると読みは"ツアージイ"に設定されています!

とは言え、普通、商標調査をする時は類似の称呼までチェックします。類似称呼検索はまた別の画面「称呼検索」から行なう必要があるのですが、ここで、"ツアージー"を入力するとちゃんとヒットします。

ということで、いろいろとトラップはあるのですが、ある程度慣れている人ならすぐ見つかると思うので、やはりヨネックス側の商標調査不足のそしりは免れないのではないかと思います。

とは言っても、個人が自分で商標調査する場合には、J-PlatPatには現代的な検索システムでは想像できないような挙動が上記以外にもいろいろあるので注意が必要です。

ところで、商標に限らず特許でもですが、公報データをhttp://www.hogehogex.jp/tm/<公報番号>のような形式でオープンなサーバーに置いておいてくれればGoogle先生が勝手にインデックス作って、シソーラスや表記ゆれも反映して全文検索できるようにしてくれるので、安上がりで上記のようなめんどくさいこともないですし、固定リンクで公報を指定できるようになって便利なことこの上ないのですが、なぜかそういう方向には行かないのですよね(特許庁にはパブコメ上げてるんですが)。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

有料ニュースの定期購読

栗原潔のIT特許分析レポートサンプル記事
月額880円(初月無料)
週1回程度
日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。