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【特別対談】プロフェッショナルのキャリアvol.6「生涯のキャリアを考えよう」森本千賀子×倉重公太朗

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

【前回までの記事はこちら】

Vol.1:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180730-00091270/

Vol.2:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180731-00091384/

vol:3:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180802-00091534/

vol.4:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180803-00091798/

vol.5:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180806-00091801/

倉重:ではまた別のフェーズに行きたいと思うんですけれども、例えば「さよなら、おじさん」というNewsPicksの文句が話題にもなりましたけれども、今いるいわゆる昭和型のマネジメントをしている会社とか、そういう管理職の方はまだまだ多いのかなと思うんですが、そういう方に向けてのメッセージがあればお願いします。

森本:残念ながら、終身雇用は今や崩壊をしていて、まじめにこつこつ働いていれば右肩上がりで、ポストも収入も伸びていく時代は終わってしまいました。なので今からでも本当にその準備をしておかなければいけない。で、かつ100年人生ですから、そういう意味でいうと、多少、雇用延長の制度があるとはいえ、60歳1日で収入が3分の1とかになるわけですよ。

倉重:定年後再雇用になった後ですね。

森本:はい。再雇用されるのはされるんですけれども、収入がやっぱり3分の1とか半分になるわけですよ。だとしたら逆にそのときにちゃんとそれまでに自分のしっかり手に職のキャリアとかスキルを磨いておいて、じゃあそのタイミングで、例えば定年とかがないようなベンチャー企業でしっかり稼ぐというような選択肢を持つということを踏まえて、今からでも、今すぐにでも準備しておかなければいけないと思います。

倉重:でも現実問題として、50過ぎると転職なんて難しいよ、という意見も多いですけれども、実際にご経験からして、50過ぎても転職はできていますか?

森本:全然できていますよ。皆さん、全然できています。年齢はある意味、昔と比べるとすごく緩和されていて、そもそも求人に年齢表記できないじゃないですか。ということも踏まえて、企業側も多少、年齢幅も広げて選考しているので、そういう意味では、年齢は高いけれども、その分スキルがあるとか、その分意欲があるとか、逆にもうどこでも行けますみたいな。例えばお子さんなんかも手離れしていて、自分は別に東京にこだわる必要はないと。地方都市だってどこだって行けるというふうなことで選択肢を広げていらっしゃる方もいるので、なので50だからといって転職ができないわけでも、今のところにとどまらなきゃいけないわけでもない。ただしやっぱりその分の準備だとか、身構えというんですか、スタンスみたいなのはやっぱり大事です。

倉重:どういうスタンスが大事でしょうか。

森本:要は今まである程度看板で仕事をしていた人たちだとすると厳しいですね。

倉重:「○○株式会社の倉重です」みたいなやつですね。

森本:そうなんです。だから看板取れた瞬間に何も武器がなくなるので、ちゃんとそこをわきまえて、自分のブランドをつくっておくとか、変化に対応できるようなスキルやマインドセットを身に付けておくとか、その上でも年齢の高い人ほど、私はパラレルキャリアとか兼業とかというのを開放してあげるべきだと思います。今さら会社の中で異動もできない人であればなおさら。

倉重:確かに「今の会社で居場所はないよ」とは言いづらいですしね。

森本:そうですよ。とすると、滞留しちゃうんです。なので、むしろそういう方ほど。

倉重:外に意識を向けるべきであると。

森本:外に意識を向けていろいろなトライアルの機会とか、そういうチャンスを与えてあげるべきだと思います。

倉重:「ある女性からのメッセージ。50歳で初めての転職」っていうエピソードを教えて下さい。

森本:これはずっと専業主婦をやられていた方なんです。結婚してから。50歳のときに、お嬢さんが大学生で、大学4年生で就職活動で履歴書を書いているのを横で見て、私も仕事をしたいと、初めて思ったのがちょうど50歳。

倉重:それはすごいですね。

森本:そう。ただ、履歴書を書いていろいろなところに送るんですが、なかなか雇ってもらえず、何とか採用してもらえたのが、あるホテルのパート800円の仕事だったんです。そこからスタートしたんです。そうしたらあれよあれよという間に営業部長になり、そのホテルの副支配人までになったという方なんです。彼女がやっていたのは、まずもう思い立ったら吉日なので、年齢関係ないと。Never too Lateだと。何事も遅過ぎることはないという。もうやろう、やりたいと思ったそのときが吉日で、それはやるかやらないかだと。

もう一つ言っていたのが、専業主婦の仕事も当初は送っても送っても履歴書が通らなくて、面接にも呼んでもらえなくて、自分のこの二十数年やっていた専業主婦生活が無駄だったのかと悲しくなったそうなんですけれども、入ってみたら、結構ノウハウとかナレッジが生かされたらしいんです。専業主婦で培ったものが。どんなことも無駄じゃないなということが分かったそうなんです。何かそういうことをその彼女自身から教わったという。

倉重:専業主婦という職業は、もう今やぜいたくな職業になりつつありますしね。

森本:はい、そうです。もう今や、もう幻の職業ですからね。

倉重:幻の。

森本:幻の職業ですから。

倉重:実際、私の知っている方で、40代まで専業主婦をやられて、近くの会社でパートをやり、その後正社員に登用され、登用される中でいろいろ勉強したいなと思って大学の夜間に行って、大学出たら、その後、院まで行き、院が終わったら今度は大学講師になった早川由美さんという方がいます。その方は、現在も東洋大学で教壇に立たれているんですけれども、本当にNever too Lateそのものですよね。

森本:そうですね。まさにいつからでも本当に遅くなくて、やろうと思えばできるという。なので、専業主婦の方もそうなんだとすれば、そういうおじ様たちだとしても同じですよね。

倉重:同じですね。

森本:いつからでもできるんですよ。

倉重:私は主婦だから、経験ないから。いやいや、私はもう50過ぎてこの会社しか知らないから。同じことですよね。

森本:同じなんですよ。

倉重:やってみたらいいじゃないかと。

森本:そうなんですよ。なので、そういう意味でも、企業のほうで開放してあげないと、それはやっぱりできないので、そうなんです。

倉重:いいですね。次は、男性だけじゃないですけれども、マネジメントという意味でどうですか。これからの時代のマネジメントのあり方というか、また昔と違うでしょう。

森本:そうですよね。昔は俺の背中に付いてこいっていう統率型っていうんですか。先頭走って付いてこいって言っていればみんな付いてきてたんですけれども、今、若い人たちはぱっと振り向いたら誰もいないみたいな。もう、何かどこ行っちゃったのみたいな感じになっちゃっているんですよね。

今はサーバントといって、逆にリーダーが奉仕してあげて、横に立つ。前に走るんじゃなくて横に伴走をするっていうんですか。サポートしてあげるというサーバント型リーダーシップというのが必要で、そういう意味では女性が向いているなと私は思っていて、結局、成長支援とか、活躍支援とかというようなことというのは、より多分母性を持っている女性のほうが合っているような気がしています。

倉重:確かにそういう側面があるかもしれないですね。子育てもそうですもんね。

森本:そうなんですよ。もう1人のスタープレーヤーで、何かチームを引っ張る時代じゃなくて、みんなが本当にそれぞれの個性を生かしながら、掛け算で組織をつくるというか、成長支援していくという組織マネジメントのスタイルが今、非常に重要視されたりとかしているのと、働くメンバー側も今まではMVP取りたいですみたいな人たちが多かったんですけれども、教育システムが横並び主義なわけです。 

競争させない中で育ってきている子たちなので自分1人が突出するというよりも、みんなでこのチームを盛り上げるということに喜びを見いだす人たちが多いので、そういう人たちをまとめていくという意味でも女性が合っているような気がします。

倉重:私がスピーチを勉強していたトーストマスターズクラブというNPOではリーダーシップの教育もやっていて、やっぱりサーバントリーダーシップが大切だって教えられるんですよね。リーダーの人が一番汗をかくとか、一番下働きをするとか。

森本:そう。下働きするというのが大事。

倉重:一番下の人がやりやすくなるにはどうしたらいいのかを常に考えるみたいなというのは勉強してきましたが、それは家庭や子育てにも影響していると思うし、会社でも同じかなと思います。

森本:そうですね。子育てそのものがそういったマネジメントに生かされると思います。

倉重:そうね。その経験がね。倉重:専業主婦経験、子育て経験がある人こそ、また管理職を目指すべきだということですね。

森本:まだ管理職で活躍できるチャンスはあるということです。

倉重:なるほど、いいですね。そういう意味で、改めて、女性のキャリアという話に行きたいと思いますけれども、ライフイベントというのがある中で、これからの女性のキャリアのつくり方はどういうふうに考えていったらいいですか。

森本:さっきもちょっと申し上げましたけれども、やっぱり今、女性の管理職比率がまだまだ低いんです。でもこれから労働力を確保していく上でも、企業はもう女性をちゃんと活躍推進して生かしていかなきゃいけないと思っているので、そういう意味でいうと、とにかくロールモデルをどれだけたくさんつくって、今いる女性の人たちがそこを目指して頑張ろうと思ってもらえるかが重要です。その意味でも先程述べた管理職を目指して、自分のキャリアを作っていって欲しいなと思います。

倉重:自社にはロールモデルがいないという悩みも結構聞くんですけれども。

森本:そういうときは・・・

倉重:自分がそうなれと?

森本:そうです。自分がそうなれ。もう、誰かがそのフロンティアでつくらないと、一生誰も生まれないわけですよ。誰かがフロンティアになるんです。フロンティアランナーになるという、その心意気というんですかね。後から続く後進の、後輩たちのためにも、自分たちの子供たちのためにも自らがそのロールモデルになっていくという姿勢が大事です。

倉重:だから女性のキャリアという話をしたときに、冒頭でも出ましたけれども、モリチさんみたいなスーパースターじゃないと、スーパーウーマンじゃないと何か両立できないのかといったらそんなことはなくて、専業主婦生活が長かったとしても、またキャリアの復帰は十分可能であると。そういう時代になってきたということですね。

森本:そうです、そうです。

                                                     (最終回へつづく)

対談協力:森本千賀子

1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒。

1993年リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。転職エージェントとして、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、主に経営幹部・管理職クラスを求めるさまざまな企業ニーズに応じて人材コーディネートに携わる。約3万名超の転職希望者と接点を持ち、約2000名超の転職に携わる。

約1000名を超える経営者のよき相談役として公私を通じてリレーションを深める。累計売上実績は歴代トップ。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、全社MVP/グッドプラクティス賞/新規事業提案優秀賞など受賞歴は30回超。常にトップを走り続けるスーパー営業ウーマン。

プライベートでは家族との時間を大事にする「妻」「母」の顔 も持ち、「ビジネスパーソン」としての充実も含め“トライアングルハッピー=パラレルキャリア”を大事にする。

2017年3月には株式会社morich設立、代表取締役として就任。

転職・中途採用支援ではカバーしきれない企業の課題解決に向けたソリューションを提案し、エグゼクティブ層の採用支援、外部パートナー企業とのアライアンス推進などのミッションを遂行し、活動領域も広げている。

また、ソーシャルインベストメントパートナーズ(SIP)理事、放課後NPOアフタースクール理事、その他社外取締役や顧問など「複業=パラレルキャリア」を意識した多様な働き方を自ら体現。

3rd Placeとして外部ミッションにも積極的に推進するなど、多方面に活躍の場を広げている。

本業(転職エージェント)を軸にオールラウンダーエージェントとしてTV、雑誌、新聞など各メディアを賑わしその傍ら全国の経営者や人事、自治体、教育機関など講演・セミナーで日々登壇している現代のスーパーウーマン。現在、2男の母。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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