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【特別対談】プロフェッショナルのキャリアvol.4「良い副業と良いキャリア」 森本千賀子×倉重公太朗

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

Vol.1:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180730-00091270/

Vol.2:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180731-00091384/

vol:3:https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180802-00091534/

倉重:で、ここからが本題なんですけど、これ、前回の唐鎌さんとの対談でもちょうど出ていたんです。副業というテーマが。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20180619-00086446/

 副業について話しているときに、実際、森本さんが仰ったNPOやボランティアみたいなラキラ副業、つまり、いい副業の例が良く出てくるわけです。ただ、正直なところ、皆がそうなら会社は止めないと思うんですよね。

 実際のところ、大半の人の副業はむしろやっぱり手取りが減ったとか、今、将来的にローンも抱えて不安だとか、あるいは人によっては借金を返さないといけないとか、そういうことでお金優先でやるというのがあるのもまた事実なわけです。

 そうなるとどうしても長時間とか、夜間とか、早朝とか、結構しんどい仕事になって、そうなると過重労働みたいな話になって、マイナス面の影響が多くなると思うわけです。元々、1社で十分な給料をもらって、そもそも副業する必要とかあるのかみたいな話もあるんですけれどもね。

 そんな中で、「良い副業」を増やしていくためにはどうしていったらいいと思います?

森本:私も、収入のためという人もいると思っているんですけれども、でも今のままだと潜伏の伏。伏業。だから要は禁止されていても、隠れてやっちゃうことになりますよね。

倉重:もぐりでやっているヤミ副業みたいな。

森本:もぐりでやっちゃっているわけですよ。そうなんですよ。だからそうだとしたら、じゃあどうしたらその人自身のもっとバリューが上げられるのかとか、仮に例えばそのバリューを上げるための学習期間みたいなことを会社側が提供してあげるとか、ある意味、潜伏してもぐりでアルバイトとかしなくても、もっともっと本質的にちゃんと堂々と稼げるようにするためにその人をどうしてあげればいいのかというようなことを見てあげたらいいのになと思っているんです。場合によっては、じゃあ潜伏しないでもちゃんとダブルワークを認めてあげて、例えばそのためのナビゲートというか、例えばこういう選択肢があるよと

企業が示せるかですよね。例えば大手企業で仕事されていた部分の一部を、ベンチャー留学しませんかみたいなことをあっせんしている企業もあったりするんです。

倉重:それは副業しませんかというのを企業側からむしろ提案するということですか。

森本:そうです。だから隠れてやられるぐらいだったら、何かそういう選択肢を用意してあげるみたいなこともあってもいいんじゃないかと思っているんです。

倉重:それも一つのキャリアの育て方なわけですよね。1社だけで成長できないんだったら外部環境を使ってみて。

森本:外部のところでやるとか、あとは本当にそういう勉強するための教育費を一部負担してあげるとか、自分のバリューを上げるためにやるということですね。

倉重:昔だったら出向とかで違う会社に行ってみるだとか、われわれ弁護士とか何か期限付きで公務員やってみるとか、裁判官をちょっとだけやってみるとか、そういうキャリアチェンジなんかもあったりするんですよね。

 そういうのをやって、また戻ってくると、より深みのある弁護士になっていたりとかというのもあるので、それも一般のサラリーマン、どんな社員だって同じことですよね。

森本:そうなんです。なので、働き方とかも何か同じ部署ですいすいと上がっていくんじゃなくて、そういう幾つかの選択肢を用意してあげるというのも必要かと思います。今、思っているのが、例えば3年ぐらいだったらまだどの会社が旬かぐらいは分かるんですけれども、5年とか10年先ってもう見えないわけです。よく聞かれるんですよね。どの業界で、何やっていれば、要は食いっぱぐれないのかって。ただ、私たち転職エージェントでも分からなくて。

倉重:これだけ未来が不確実な世の中ですから10年先のことは分からないですね。

森本:ただ1個だけ言えるのは、例えば日本の労働人口の約半分の49%がAIやロボットに置き換わる可能性があると野村総研がデータを発表しましたが、じゃあそうなったときに自分がやっていた仕事が、ある時AIで対応できるようになったからやらなくていいよと言われたときに、じゃあBやCという選択肢がその瞬間とれるという準備をしておくというのが大事かなと思っています。

倉重:変化適応力ですよね。

森本:そうです。そのためにも、「もうこのことしかできません」みたいなキャリアの人をつくっちゃった瞬間に、会社側としても、その人を生かせなくなるんですよね。

倉重:まさに。だからこれはちょうど本日議論をしようと思ったことの一つのテーマで、大企業に勤めている方にとって、じゃあ今、居続けるのがいいのか、それともちょっと今後どうかなと思ったときに出るのがいいのか、どっちもリスクがあるのかなと思うんですよね。居続けるリスクというのも逆に多分その仕事しかできなくなっちゃって、それがなくなったとき、あるいはその会社自身が傾く可能性だってあるし、そういうときどうするのかだし、また、出たら出たで、また別に今までのほうが良かったなというようなリスクがもちろんあるのかもしれない。それは結局、常にどっちになってもいいような備えをしておけということですね。

 

森本:そうです。大企業の中であれば、たくさん部署があり、子会社や関連会社もあるわけですから、自分で観察しながらどういうキャリアだと今後必要とされる領域なのかみたいなことを考えながら、そこに例えば異動の希望を出す。今、大企業だと自己申告制度、FA制度みたいなのがあって、自分でこの部署に行きたいとか、異動したいというのに自ら申告できるような制度もあったりすると思うんです。そういうふうにして、どこにでも持っていける、大企業の中での異動もそうだし、もしかしたら転職したときにも持っていけるポータブルのスキルというのはちゃんと複数でもつくっておくべきだと思います。

倉重:そうですね。もう何か自分のキャリアを人事部に委ねる時代じゃないですから、例えば大企業でいろいろなことをやっている部署があるんだったら、もしやりたいことがあるならば、まず行きたいと対話してみろと。口に出して言ってみろと。あるいは社内の部署異動がだめなら、子会社への出向でもいいし、転籍もありというのを散々お願いしてみて、それでも全部叶わなかったら転職も考えるということですかね。

森本:叶わなかったら転職も考えるということです。

倉重:まずやれることをやってみようという感じなんですかね。

森本:本当はそれを人事が戦略的に考えてあげるべきなんですよね。

その人のキャリアパスやキャリアビジョンを作ってあげられればいいんですけれどもね。

倉重:どうせなら、その人が持っている潜在的なスキル・能力はやっぱりその社内、あるいはその会社グループで生かしてほしいですよね。

森本:そうなんですよ。だけどそういう活かし方をしていない企業が多いので。

倉重:昔のように2~3年に1回、機械的にエクセルはじいて配置転換、異動じゃなくて、この人はこういうパーソナリティーを持っているから、こういう経験をさせてあげたほうがいいよなというのをどんどん人事が戦略的にしていくべきで、それは社内で異動する場合もそうですが、社外に出る場合も同じことですよね。

森本:そうなんです。だからそうしていけば、多分わざわざ社外に転職しなくても、十分その会社の中でその方自身のバリューが上がっていくし、ちゃんとそういう選択肢のあるスキルも磨かれていくと。

倉重:もうIBMのワトソンでそういう細かな個人ごとのキャリア提案というのもできるようになってきているから、そういうもっと細かなマネジメントというのはもしかしたらAIの力を借りてできるようになっているのかもしれないですね。

森本:そうですね。もうその日は近いと思います。

(vol.5へつづく)

対談協力:森本千賀子

1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒。

1993年リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。転職エージェントとして、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、主に経営幹部・管理職クラスを求めるさまざまな企業ニーズに応じて人材コーディネートに携わる。約3万名超の転職希望者と接点を持ち、約2000名超の転職に携わる。

約1000名を超える経営者のよき相談役として公私を通じてリレーションを深める。累計売上実績は歴代トップ。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、全社MVP/グッドプラクティス賞/新規事業提案優秀賞など受賞歴は30回超。常にトップを走り続けるスーパー営業ウーマン。

プライベートでは家族との時間を大事にする「妻」「母」の顔 も持ち、「ビジネスパーソン」としての充実も含め“トライアングルハッピー=パラレルキャリア”を大事にする。

2017年3月には株式会社morich設立、代表取締役として就任。

転職・中途採用支援ではカバーしきれない企業の課題解決に向けたソリューションを提案し、エグゼクティブ層の採用支援、外部パートナー企業とのアライアンス推進などのミッションを遂行し、活動領域も広げている。

また、ソーシャルインベストメントパートナーズ(SIP)理事、放課後NPOアフタースクール理事、その他社外取締役や顧問など「複業=パラレルキャリア」を意識した多様な働き方を自ら体現。

3rd Placeとして外部ミッションにも積極的に推進するなど、多方面に活躍の場を広げている。

本業(転職エージェント)を軸にオールラウンダーエージェントとしてTV、雑誌、新聞など各メディアを賑わしその傍ら全国の経営者や人事、自治体、教育機関など講演・セミナーで日々登壇している現代のスーパーウーマン。現在、2男の母。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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