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新型コロナワクチン接種は今後どうすればよいか? 子どもへのワクチンは?

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

新型コロナは「5類感染症」に移行しましたが、公費による無料接種は当面続けられます。さて、患者さんからよく「新型コロナワクチンはまだ接種しておいたほうがよいのか?」という質問を受けます。

薄れるワクチンの恩恵

足元でじわじわと感染者数は増えていますが、以前のように重症者が急増していないため、全国的にはまだ医療逼迫にまで至っていません。

これは、ウイルスが変異し続けていることに加えて、すでに感染した人やワクチン接種が行きわたった人が増えて、国全体で免疫が底上げされているからだと考えられます。

従来株と比較すると、現在の変異ウイルスは以前ほど感染予防効果が期待できませんが、集団としては十分に機能する有効性はあり、また重症化予防効果は半年~1年程度は期待できるとされています。

しかし、半年~1年以上前に接種をやめてしまった人は、感染あるいは重症化しやすい状態になっていく懸念があります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、最終接種から1年以上が経過した場合、追加で接種することを推奨しています(1)。

現在すすめられている接種

現在、無料で接種可能な新型コロナワクチンは以下の通りです。

① 令和5年春開始接種(オミクロン株対応2価ワクチン)

② 未接種者の初回接種(従来型ワクチン)

③ 乳幼児(生後6か月~4歳)初回接種(従来型ワクチン)

④ 小児(5~11歳)初回接種(従来型ワクチン)

⑤ 小児(5~11歳)追加接種(小児用オミクロン株対応2価ワクチン)

5月8日から「令和5年春開始接種」がすすめられています。流行初期の従来株と直近流行していたオミクロン株のBA.1やBA.5に対応した2価ワクチンを接種しています。

この春接種の対象となっている人は、「1、2回目接種済の65歳以上の高齢者」、「1、2回目接種済の基礎疾患を有する12歳~64歳」、「1、2回目接種済の医療従事者・高齢者施設等従事者」です(図1)。

あまり知られていませんが、現在、健康な12~64歳は接種対象外です。

図1. 新型コロナワクチンの接種スケジュール(筆者作成)
図1. 新型コロナワクチンの接種スケジュール(筆者作成)

多くの人は秋から接種可能

令和5年9月1日から「令和5年秋開始接種」が始まります。このとき、現在接種対象外である基礎疾患を有さない12歳~64歳も接種対象になる予定です。

昨日厚労省の専門家分科会で導入が決定されたのが、オミクロン株派生型「XBB」に対応したワクチンです。

アメリカ食品医薬品局(FDA)でも、従来株の成分は不要と判断し、XBB対応1価ワクチンへの転換を推奨しています(2)。

子どものワクチンは?

現在、子どもの新型コロナワクチン接種率は約2割と低い状況です。正確な感染率は不明ですが、成人の自然感染率は32.1%とされていることから、多くの子どもがまだ新型コロナに罹患していないと推察されます(3)。

実際、学校でクラスターが発生しているという報道も、最近よく耳にします。

日本小児科学会は、「生後6か月~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を推奨する」と、追加の提言を今月ホームページ上で公開しています(4)。学会の推奨を知っておくことも重要ですので、根拠となるデータ等については下記のリンク先をご一読ください。

子どもが感染しても多くが軽症で終わるのは事実ですが、未接種で感染する場合の重症化リスクと後遺症リスクのほうが、接種の副反応よりもメリットが大きいというのが、公的機関の見解です(図2)。

図2. 子どもに対する新型コロナワクチンの効果(参考資料4~6を参考に筆者作成、イラストはシルエットイラストから使用)
図2. 子どもに対する新型コロナワクチンの効果(参考資料4~6を参考に筆者作成、イラストはシルエットイラストから使用)

子どもの新型コロナワクチン接種における副反応は、含まれているメッセンジャーRNAの量が少なく、成人よりも頻度が低く程度が軽いことが分かっています。

しかしこれらについて、政府・学会と国民の対話がうまく進んでいない印象を持っています。SNSなどでも、「子どもはそもそも重症化しない」「ワクチンの副反応が大きい」という見解の親は少なくないと感じています。

まとめ

すでに接種をやめてしまった人は、今後ワクチンの恩恵が減衰していく可能性があるので注意してください。

インフルエンザワクチンと同じように、今後は高齢者や基礎疾患がある人、妊婦、子どもへの接種が優先的にすすめられていくでしょう。

基礎疾患のない12~64歳も9月1日からの「令和5年秋開始接種」でXBB対応ワクチンが接種可能です。

コロナ禍前、少なくともインフルエンザワクチンを接種していたような人は、インフルエンザより手ごわい感染症を前にしていることから、引き続き接種を検討してください。

(参考)

(1) COVID-19 vaccine effectiveness updates. 15 June 2023.(URL:https://www.fda.gov/media/169536/download

(2) Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee June 15, 2023 Meeting Announcement. JUNE 15, 2023. (URL:https://www.fda.gov/advisory-committees/advisory-committee-calendar/vaccines-and-related-biological-products-advisory-committee-june-15-2023-meeting-announcement

(3) 厚生労働省. 第6回抗体保有調査(住民調査)速報結果(令和4年度新型コロナウイルス感染症大規模血清疫学調査).(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001084515.pdf

(4) 小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)(URL:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=507

(5) Watanabe A, et al. JAMA Pediatr. 2023 Apr 1;177(4):384-394.

(6) Fitzpatrick MC, et al. JAMA Netw Open. 2023 May 1;6(5):e2313586.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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