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従来型の新型コロナワクチンは年内で供給終了 12歳以上はもう初回接種できなくなる?

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

従来型の新型コロナワクチンは年内で供給が終了します。オミクロン株に対応した2価ワクチンに順次スイッチされていますが、1つ問題があります。現時点で、2価ワクチンは3回目接種以降にしか対応していません。つまり、12歳以上は初回接種ができなくなる可能性があります。

1・2回目接種の使用ワクチン

現在、1・2回目接種に用いられている新型コロナワクチンは、ファイザー社製の、①6か月~4歳用のワクチン②5~11歳用のワクチン③12歳以上用の従来型ワクチン、モデルナ社製の④12歳以上用の従来型ワクチン、ノババックス社製の⑤12歳以上用のワクチン、の5つがあります()。特にファイザー社製ワクチンは年齢別に複数あって、ややこしいですね。

表. 制度上接種可能な新型コロナワクチン(筆者作成)(アストラゼネカ社製のワクチンはすでに供給終了となっており掲載せず)
表. 制度上接種可能な新型コロナワクチン(筆者作成)(アストラゼネカ社製のワクチンはすでに供給終了となっており掲載せず)

オミクロン株対応の2価ワクチン

2回目以降の最終接種から3か月以上が経過すると、オミクロン株対応の2価ワクチンを接種することができます。国際的には5歳以上で接種が可能ですが、現時点で国内では11歳以下には接種できません。

2価ワクチンにはBA.1対応のものと、BA.4-5対応のものの2種類があり、いずれも従来型を上回る効果が示されています。ファイザー社製の①12歳以上用の2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.1)②12歳以上用の2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.4-5)、モデルナ社製の③18歳以上用の2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.1)④18歳以上用の2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.4-5)、の4つがあります()。

BA.1よりもBA.4-5に対応したワクチンのほうがよさそうに感じるかもしれませんが、待っている間に前回のワクチンの効果が低下していくので、早く接種できるほうを選択することをおすすめします(図1)(1)。

図1. いずれか早く打てるワクチンで1回接種をしましょう(参考資料1より引用)
図1. いずれか早く打てるワクチンで1回接種をしましょう(参考資料1より引用)

供給終了後は初回接種できない?

上記のの赤字で書いた部分、つまり12歳以上の従来型ワクチンは年内で供給が終了する見込みです(図2)。

図2. 従来型ワクチンは年内で供給が終了(筆者作成)
図2. 従来型ワクチンは年内で供給が終了(筆者作成)

「それなら、流通させているオミクロン株用の2価ワクチンを初回接種に適用すればいいのでは」と思われるかもしれませんが、国際的にこれがまだ承認されていません。理由は、2価ワクチンの初回接種の臨床試験データがないからです。

つまり、供給が終了すると決まった段階で、年内にワクチンを2回接種していない12歳以上の人は、今後ワクチンの接種が難しくなる可能性があります

そのため、厚労省も年内にできるだけワクチン接種を完了してほしいと呼びかけています(図3)(2)。

図3. 年内に1・2回目接種を完了することをご検討ください(参考資料2より引用)
図3. 年内に1・2回目接種を完了することをご検討ください(参考資料2より引用)

現在、12~19歳のワクチン2回接種率は約75%ですが、残りの25%は第8波以降ワクチン接種なしの状態が継続するかもしれません。

「12歳の誕生日」に注意を

また、現在5~11歳のワクチン2回接種率は約20%です。最近はほとんど伸びておらず、接種の啓発に限界が見えています。

この年齢層の盲点は「11歳」です。現時点では12歳以上の1・2回目接種用のワクチンの供給が終了すると通達されていますが、12歳の誕生日前日で小児用ワクチンの対象外になってしまいます

※ワクチン接種では、誕生日の前日から12歳として扱われますのでご注意ください。

そのため、「12歳になってから接種しよう」と思っていても、実現しない可能性があります

1・2回目接種の間隔は3~4週間となっています。未接種の方は、今のうちに自治体のウェブサイトで情報をチェックして、接種についてご検討ください。

付記:いささか許容しがたい状況であると感じております。今後政府から何らかの救済策が提示されるかもしれません。

(参考資料)

(1) 厚生労働省. オミクロン株対応ワクチンの種類と特徴(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000999261.pdf

(2) 厚生労働省. コロナワクチン1・2回目接種(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000998478.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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