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医師が患者から聞かれる、胸部X線写真の「コレなんですか?」 トップ3

倉原優呼吸器内科医
(胸部X線写真は筆者自身のもの、イラストは看護roo!より使用)

誰しも「胸部X線写真(胸部レントゲン写真)」を撮影したことがあると思います。主に肺を見るために撮影しますが、私たち医師が患者さんからよく聞かれる「コレなんですか?」があります。

意外と知られていない、「左右が逆」

実は、胸部X線写真は「左右が逆」になっています。向かって左側が右肺、向かって右側が左肺になっているのです(図1)。結構、知られていないと思います。

図1. 正常の胸部X線画像(胸部X線写真は筆者自身のもの)
図1. 正常の胸部X線画像(胸部X線写真は筆者自身のもの)

左右が逆で分かりにくい」と思われるかもしれませんが、あなたが誰かと対面しているのと同じなのです。向かって左側に、相手の右手がありますよね?

なので、対面している人の胸が透けてX線画像が見えていると思ってください。

よく聞かれる「コレなんですか?」

外来で胸部X線写真の結果を説明しているとき、高頻度で聞かれる「コレなんですか?」があります。個人的な経験に基づく、トップ3を紹介しましょう。

第1位は、①心臓です(図2)。中央にドドンとある白い風船みたいなものが心臓です。異常に膨らんで見えますが、これでもむしろ小さめなくらいです。

図2. 患者さんからよく聞かれる「コレなんですか?」(胸部X線写真は筆者自身のもの)
図2. 患者さんからよく聞かれる「コレなんですか?」(胸部X線写真は筆者自身のもの)

第2位は、②胃内の空気です。これが外に出るとげっぷになります。胸部X線写真では、向かって右側、下の方に黒くみえる物体です。X線は空気が黒く、水は白く見えます。そのため、左右にある肺だけでなく、胃内の空気は黒くうつります。

第3位は、③血管です。心臓からニョキニョキと生えている枝のような白いものは、肺と心臓をつなぐ重要な血管です。いささかグロテスクな見た目なので、心配して聞いてこられる方が多いです。

あと、コロナ禍でよく聞かれるのが「新型コロナの肺炎とかないですか?」です。今のところ、これを聞いてきた人は全員大丈夫でした。

まとめ

胸部X線写真は、前後の構造物が全て重なって撮像されるため、何が正常で何が異常なのか、解剖学の知識を総動員しなければいけません。実はとても奥が深く、胸部X線写真だけで1冊の医学書が出来上がるくらいなのです。

「胸部X線写真は正常です」と言われても、もし気になる場所があったら、医師に遠慮なく聞いてください。私の場合、「コレなんですか?」と患者さんに聞かれると、嬉しくなって豆知識を語りだしてしまいます。

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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