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緩和は進むか? 新型コロナの濃厚接触者・陽性者の待機・隔離期間 現時点でのまとめ(追記あり)

倉原優呼吸器内科医
photoACより使用

★2022年9月8日 記事を改訂しました(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220908-00313794

各地で新型コロナ陽性者が急増し、第7波は大きな医療逼迫をもたらすかもしれません。濃厚接触者の自宅待機期間が実生活に与える影響が大きいことから、7月22日にこれが緩和されました。改めて、新型コロナの濃厚接触者・陽性者の待機・隔離期間を確認しておきましょう。

陽性者の療養期間は10日間

新型コロナが陽性と判断されれば、保健所に医療機関から発生届の提出が必要になりますが、この「診断」そのものが医療逼迫の原因にもなっています。

自分で抗原検査キットを用いて陽性と判断した場合、行政が設置し医師を配置する「健康フォローアップセンター」等に連絡する形で医療機関や保健所の負担軽減を目指しています(1)。

さて、陽性者の療養期間については、症状があるかないかで変わります(図1)。無症状の場合は、濃厚接触者と同じく検体採取日を0日目とし8日目に解除となります(※1)。有症状の場合、発症日を0日目とし11日目に解除となります(※2)。 後述するように濃厚接触者では緩和が進みましたが、陽性者は隔離期間が長い状況です。

  • ※1 記載方法は自治体ごとに差があり、「7日目」を療養解除日、「8日目」を就業・登校等が可能と記載している場合もあります。
  • ※2 記載方法は自治体ごとに差があり、「10日目」を療養解除日、「11日目」を就業・登校等が可能と記載している場合もあります。

図1. 無症状陽性者と有症状陽性者の療養期間(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)
図1. 無症状陽性者と有症状陽性者の療養期間(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)

診断時に無症状だった人が途中で新型コロナを発症した場合、発症日を0日目と再設定して有症状の陽性者扱いとなります。陽性者の症状や重症化のリスク等を踏まえて、自治体の保健所が入院または宿泊療養施設への入所を判断することになります。宿泊療養施設に入所した場合、基本的に解除日が退所日となります。

「発症から5日が経過しておればマスクを着用して短時間外出してもよいのでは」という専門家からの見解もありますが、この原案は現時点では採用されていません。

濃厚接触者の定義

もはや個々の濃厚接触者を追跡できていないので、厳密な定義を残すべきか議論の余地がありますが、濃厚接触者の定義は長らく変わっていません。自治体によって表記が異なりますが、概ね以下の通りとなります(図2)。陽性者と同居していると濃厚接触者になります。それ以外では「1m以内・15分以内」というのが原則です。

図2. 濃厚接触者の定義(筆者作成)
図2. 濃厚接触者の定義(筆者作成)

医療機関や高齢者施設におけるクラスターなどを除いて、幼稚園・保育園・小学校や事業所では濃厚接触者の同定はもはや求められておらず、各自に委ねられている部分があります。

濃厚接触者の自宅待機期間は5日間

2022年7月22日に緩和されたのが、濃厚接触者の自宅待機期間です。7日間からさらに短縮され「5日間」となりました。具体的には、最終接触日を0日目とし6日目に解除となります(図3)。

図3. 濃厚接触者の自宅待機期間の考え方1(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)
図3. 濃厚接触者の自宅待機期間の考え方1(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)

7月22日の緩和ではこの点には触れられていませんが、同一世帯内で濃厚接触者が次々と新型コロナを発症した場合の解釈は少し難しくなります。濃厚接触者が不運にも新型コロナを発症して陽性になった場合、その時点で濃厚接触者ではなくなりますから、陽性者として10日間の療養期間が発生します(図4,上段)。

図4. 濃厚接触者の自宅待機期間の考え方2(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)
図4. 濃厚接触者の自宅待機期間の考え方2(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)

通常の感染対策を継続している場合、最後の家族が陽性になった日から5日間自宅待機をすることになります (図4,中段)。通常の待機期間よりも長くなります。

しかし、当初から部屋を徹底的に分離するなどの厳格な感染対策ができておれば、最初の陽性者に対して対策を講じた日を起算として通常の解除でよいとする自治体もあります(図4,下段)。このあたりは自治体によって解釈が異なるため、お住まいの自治体のウェブサイトを確認するようにしてください。

検査を用いた濃厚接触者の自宅待機期間短縮

濃厚接触者になった場合、2日目と3日目の検査で陰性が確認されれば、最短3日で待機が解除可能です(※)。

※濃厚接触解除のために、発熱外来へ濃厚接触者が検査に来ることは絶対に避けなければいけません。自己検査にて行うべきと考えます。

医療従事者は毎日検査しながら勤務することがすでに認められているため、一般の人と少し差異があります(図5)。また、医療従事者はPCR検査や抗原定量検査といった精度の高い検査の場合、3日目の検査陰性を確認することで出勤することが可能です。

検査をしない場合、一般の人も医療従事者も、上述したように6日目で待機解除となります。

図5. 濃厚接触者の自宅待機期間と検査による自宅待機期間短縮(筆者作成)
図5. 濃厚接触者の自宅待機期間と検査による自宅待機期間短縮(筆者作成)

検査陰性だからといって3日目に医療機関で働くのはさすがにちょっとリスクが高いかもしれません。感染の危険性にさらされるのは患者さんですから、このあたりは個々の病院で検討されるべきかと存じます。

まとめ

濃厚接触者の待機期間が緩和されましたが、陽性者の療養期間はまだ10日間です。医療従事者の陽性者は思ったよりも多い状況で、濃厚接触者の待機期間を緩和しても、最前線の欠勤者はそこまで減らないかもしれません。

また、「風邪なら数日休めばどうにかなるが、新型コロナだと10日休まないといけない」という差は大きく、この診断を求めて発熱外来の逼迫を助長している部分はあります。

検査キットが広く入手できるようになれば、もう少し医療機関の逼迫は軽減されるかもしれませんが、陽性者を把握するという現行の構図はあまり緩和されていません。

新規陽性者が急速に増えた分、減少もすみやかになるかもしれませんが、いまだそのピークは見えていません。お住まいの地域医療を守る行動を心がけていただければと思います。

(参考)

(1) オミクロン株のBA.5系統への置き換わりを見据えた感染拡大に対応するための医療機関・保健所の負担軽減等について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000968058.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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