10月のワクチン出荷量は昨年の6~7割に

多くの病院やクリニックには「今シーズン、インフルエンザワクチンの10月の供給量は昨年の6~7割になる」という連絡が来ていると思います。そのため、インフルエンザワクチン接種の予約枠をしぼっている施設が多く、「私たちは接種できないの?」という不安の声も聞かれます。

厚労省からの通達によると、確かに「昨年は10月第5週の時点で供給量全体の90%程度のワクチンが出荷済みでしたが、今冬はこれよりも遅れたペースで供給される見込み」と書かれています(1)。各種ワクチンの製造資材不足が続いており、今年10月の出荷見込み量は全体の6~7割にとどまることが分かっています。

第26回厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会)の資料によると、確かに昨年より供給量の立ち上がりが遅いのですが、そもそも昨年の供給量が例外的に多かったことが分かります(図1)(2)。年ごとの変動はあるものの、今年の供給量は平成29年度とそう変わらないようです。最終的に供給量は例年水準まで到達するため、ワクチン不足を過度に心配しなくてもよいかもしれません。

図1. 今シーズンにおけるインフルエンザワクチンの供給(参考資料2より一部改編して引用)
図1. 今シーズンにおけるインフルエンザワクチンの供給(参考資料2より一部改編して引用)

多くの希望者が接種できるとはいえ、少ない供給量でインフルエンザワクチン接種がスタートすることは間違いありませんので、施設ごとにどう配分するか検討する必要があります。

インフルエンザワクチン接種の優先度

2021年10月1日時点では、厚労省の通達(1)には、インフルエンザの定期予防接種の対象者に優先的に配布できるようにと注意書きがある程度です。

日本ワクチン学会は2021年6月に「生後6か月以上のすべての人に対するインフルエンザワクチンの接種を推奨する」という提言を出しています(3)。中でも特に推奨されるのは、医療従事者、小児、妊婦とされています()。

表. インフルエンザワクチン接種が推奨される人(参考資料1,3に基づき筆者作成)
表. インフルエンザワクチン接種が推奨される人(参考資料1,3に基づき筆者作成)

インフルエンザが最後に流行したのは2020年2月なので、それ以降出生した子どもはインフルエンザに対する抗体をほぼ持っていません。新型コロナ対策を徹底していることから、今冬もインフルエンザが流行しない可能性もありますが、感染症の専門家の多くは警戒しています。

インフルエンザワクチンは12月中旬頃までに接種できればよいと思いますが、ワクチン出荷量が少ない段階では、健康な成人への接種は後ずれを容認していただくほうがよいかもしれません。

新型コロナワクチンと接種時期が重複しないよう

日本では、新型コロナワクチンを接種する際、有効性・安全性に関する十分な知見が得られていないことから、他のワクチンと前後13日以上の間隔を空ける必要があります(4,5)。アメリカでは同時にワクチン接種できるのですが(6)、日本では縛りがあるわけです。日本でも今後、接種間隔が変更になればありがたいですね。

たとえばモデルナ社製の新型コロナワクチンは1回目と2回目の間隔が4週間ですが、接種の前後13日以内はインフルエンザワクチンを接種できません(図2)。新型コロナワクチンは医学的には多少後ずれしても問題ないので、うまくスケジュール調整できれば、モデルナ社製の場合、1回目と2回目の接種の間にインフルエンザワクチンが接種できるかもしれません。

図2. 新型コロナワクチンとその他のワクチン接種の考え方(筆者作成)
図2. 新型コロナワクチンとその他のワクチン接種の考え方(筆者作成)

さて、基本的には新型コロナおよびインフルエンザの両ワクチンを接種することが推奨されます。

しかし、スケジュールの関係で初回の新型コロナワクチンかインフルエンザワクチンのどちらか一方しか選べないなら、現時点では新型コロナワクチンを優先すべきと思います。インフルエンザワクチンは、高齢者では34~55%、小児では60%程度の発症を予防する効果がありますが(3)、新型コロナワクチンはデルタ株が相手でも高い発症予防効果が期待されます。いずれのワクチンも重症化を予防する効果がありますが、肺炎や呼吸不全にいたるリスクは新型コロナのほうが高いです。感染した場合の重症化リスクとワクチンで得られる効果を天秤にかけると、初回の新型コロナワクチンを優先的にスケジュールしたほうがよいと考えます。

今シーズン、インフルエンザは流行するのか?

昨シーズンのインフルエンザの推定患者数は約1万4,000人で、これまでの1年あたりの患者数1,000万~2,000万人と比較するとケタ違いに少ないです(3)。私の勤務する病院でも、ゼロでした。新型コロナの感染対策であるマスクや手指衛生が他のウイルスにも効果を発揮するため、インフルエンザが少なくなったのでしょう(7)。

今年、子どもの間でRSウイルスが流行しました(8)。前年RSウイルスの流行が抑えられたため、同時期にウイルスにさらされていなかった乳児が罹患するリスクが高まったことが原因とされています。インフルエンザについても、同様の現象が発生するリスクがあります。

とはいえ、10月1日現時点で、今シーズンのインフルエンザ報告数はわずか1例だったそうです(9)。通常、この時期であっても数百~数千例が報告されることが一般的ですから、今年もインフルエンザの発生は少なくなるかもしれません。

インフルエンザ流行のスタートがコロナ禍前より明らかに遅い水準にありますし、シーズンを通して例年と同程度のインフルエンザワクチン供給量が見込まれるのなら、焦らずにインフルエンザワクチン接種の順番を待っていただくのがよいと思います。

(参考)

(1) 季節性インフルエンザワクチンの供給について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000831140.pdf

(2) 2021/22シーズンのインフルエンザワクチンの供給等について (URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000825764.pdf

(3) 2021-22シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解(URL:http://www.jsvac.jp/pdfs/JSVAC_2020-21flu210622.pdf

(4) 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0037.html

(5) 第53回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月27日)資料(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00294.html

(6) Getting Your COVID-19 Vaccine(URL:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/expect.html

(7) 忽那賢志. 新型コロナの流行が続く今シーズン、インフルエンザは流行るのか(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210904-00252211

(8) 堀向健太. 全国的に大きな流行となっているRSウイルス感染症、どんな症状に気をつけるといいの?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/horimukaikenta/20210707-00246718

(9) インフルエンザに関する報道発表資料 2021/2022シーズン(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00009.html