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新型コロナワクチン接種後の発熱・疼痛 解熱鎮痛薬を飲んでもよいか?(追記あり)

倉原優呼吸器内科医
(写真:maroke/イメージマート)

軽度の副反応の頻度が高い新型コロナワクチン

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性は既に知られたところですが、副反応、特に接種部位疼痛(腕の痛み)、倦怠感、頭痛、発熱を解熱鎮痛薬で予防的に抑制すべきかどうか、結構意見が分かれています。インフルエンザワクチンよりは頻度が高かったため、先行接種した国公立の病院では、アセトアミノフェンという解熱鎮痛薬を全員に配っているところさえありました。

約166万人の副反応をまとめたCDCの論文(1)によると、主な副反応は以下の通りです。(いろいろな論文があるので記事によって頻度にばらつきがあるかもしれません)

【1回目接種】

・接種部位疼痛(腕が痛い):ファイザー社製63.6% / モデルナ社製71.4%

・倦怠感:ファイザー社製29.1% / モデルナ社製32.5%

・頭痛:ファイザー社製24.7% / モデルナ社製26.9%

・発熱:ファイザー社製7.0% / モデルナ社製10.0%

【2回目接種】

・接種部位疼痛(腕が痛い):ファイザー社製66.5% / モデルナ社製78.3%

・倦怠感:ファイザー社製47.8% / モデルナ社製60.0%

・頭痛:ファイザー社製40.4% / モデルナ社製53.2%

・発熱:ファイザー社製21.5% / モデルナ社製37.6%

これらの副反応はインフルエンザワクチンよりは頻度が高いようです。国内における臨床試験でも、37.5度以上になった人は1回目接種後が14.3%、2回目接種後が32.8%と高い結果でした(2)。国内の研究は被験者が少ないため参考程度ですが、発熱者のほぼ半数が37.5~37.9度におさまっています。

アセトアミノフェンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

厚労省は、接種後に服用できる解熱鎮痛剤の成分として、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどを示しています。

個人的には2回目のワクチン接種の後、悪寒と倦怠感がひどかったので、ロキソプロフェン(商品名ロキソニンなど)を飲みました。私は、アセトアミノフェン(商品名カロナールなど)で過去に重篤な肝障害になったことがあるため、基本的に解熱鎮痛薬はロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と決めているのです。

ちなみに、市販されているアセトアミノフェンには、タイレノールA、バファリンルナなどがあります。市販のものは、含まれているアセトアミノフェンのmgが少なく、個人的には定められた用法用量では効果が薄いのではないかと考えています。体重50~60kgくらいの成人なら、少なくともアセトアミノフェン1回あたり500mg飲まないと効果は出ないでしょう。市販のアセトアミノフェンの用量が低く抑えられている理由は、安全性を重視し、誰にでも使いやすいようにと考慮されているためです。

市販されているNSAIDsは、ロキソプロフェン(ロキソニンSなど)、イブプロフェン(イブなど)です。アセトアミノフェンよりも切れ味がよい解熱鎮痛薬ですが、長期的に飲むと胃粘膜を荒らす副作用があることが知られています。私はよくぎっくり腰になるのですが、いつもそういう時はロキソニンにお世話になっています。

腰痛でも解熱鎮痛薬のお世話になることがある
腰痛でも解熱鎮痛薬のお世話になることがある写真:WavebreakMedia/イメージマート

新型コロナワクチン接種後の解熱鎮痛薬

結論を書くと、個人的には「ワクチン接種後にしんどい副反応が出たら飲む」というスタンスでよいと思っています。

専門家の間で議論されることとして、「ワクチン接種の直前・直後に解熱鎮痛薬を服用することで、ワクチンの免疫応答を引き起こす能力(免疫原性)が妨げられる可能性がある」というものがあります。要は、熱があるということはワクチンの効果を誘発しているかもしれないのだから、それをお薬で抑えちゃダメ、という見解です。

確かに、ワクチン接種に際してアセトアミノフェンを飲んだ研究では、抗体価が抑えられたという報告があるのは事実です(3,4)。反面、そうでないという研究もあります(5)。これらは新型コロナではない病原微生物のワクチンの研究ですが、「どっちやねん」という宙ぶらりんの状態です。

世界保健機関(WHO)は、「解熱鎮痛薬の使用はワクチン接種前またはワクチン接種時に推奨されないが、ワクチン接種後副反応がある場合は認められる」と明言しており、アメリカ疾病対策センター(CDC)もこれについて同意しています(6)。

この方針に従うと、「接種後に副反応がしんどいようなら解熱鎮痛薬を飲んでもいい」という考えになるわけです。現時点では、打つ前に飲むという戦略は積極的には推奨されていません。また、副反応である倦怠感や頭痛は、ワクチンではない偽薬(プラセボ)でも高頻度に起こるため、「絶対、予防的に内服したほうがラクだよ」とは断言できません。

■参考記事:ワクチン接種後に「お風呂に入ってよいですか?」と多くの人が聞く理由(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210606-00241639/

■参考記事:新型コロナワクチン、どちらの腕に接種すべきか? 接種医の経験から(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210604-00238774/

■参考:厚生労働省厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A 「ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。」(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0007.html

ただし、妊婦の場合、妊娠後半期ではロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDsは避けるべきで、アセトアミノフェンが推奨されます。

新型コロナに感染した場合の解熱鎮痛薬は?

ワクチンではなく、実際に新型コロナに感染した場合の解熱鎮痛薬については、忽那先生が詳しく書かれているのでそれを参考にしてください(7)。

ちなみに、2021年5月に出た論文によると、新型コロナ確定または疑いの約7万人を対象に検討したところ、ロキソニンなどのNSAIDs使用と新型コロナ患者さんの死亡・重症化に関連はなかったと結論づけられています(8)。

※2021年6月27日:厚生労働省厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A 「ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。」について追記しました。

(参考)

(1) Chapin-Bardales J, et al. JAMA. 2021 Apr 5. doi: 10.1001/jama.2021.5374.

(2) 「COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)」(日本感染症学会 ワクチン委員会)

(3)Prymula R, et al. Lancet. 2009;374(9698):1339-50.

(4) Doedee AM, et al. PLoS One. 2014;9(6):e98175

(5) Walter EB, et al. Vaccine. 2017 Dec 4;35(48 Pt B):6664-71.

(6) CDC General Best Practice Guidelines for Immunization: Best Practices Guidance of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) (URL: https://www.cdc.gov/vaccines/hcp/acip-recs/general-recs/administration.html)

(7) 忽那賢志. 新型コロナに罹ったら、解熱薬としてロキソニンなどのNSAIDsは飲まない方が良い?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210306-00225993/

(8) Drake T, et al. Lancet Rheumatol 2021 Published Online May 7, 2021 https://doi.org/10.1016/ S2665-9913(21)00104-1

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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