不登校、ひきこもり、宿泊型自立支援施設の選び方

(写真:アフロ)

宿泊型の自立支援施設についてのトラブルが続いています。

トラブルがニュースになると、「もともとあそこはいい噂がない」とか、「そんな高額な費用を請求する時点でおかしいと思うべき」といった言葉も聞かれます。

ひとは余裕がなくなり、心身が追いつめられると、たくさんの選択肢を十分に比較し、論理的に最適な解を導くということはできません。極度の喉の渇きを前に、目の前に出された一杯の水が、身体に悪影響を与えないかどうか吟味してから少しずつ飲んでいくことは難しいことです。

最近の宿泊型自立支援施設のニュースを読んで、ご家族の誰かが長期に亘って「ひきこもり」状態であり、通所型やワークキャンプ型、オンライン型ではなく、宿泊型で自宅と離れた場所に置くしかないと思い詰めてしまったのではないかと思います。

一度、家族や地域から離れ、自分のことを誰もしらない場所で生活をすることは少なからず道が開ける可能性があります。親族や地域のつながりが重圧となり、身動きが取れなくなってしまうひともたくさんいます。そんなときは宿泊型支援を利用することも選択肢としてはあり得ますが、まずは複数の選択肢があることを知っていただきたいです。

その上で、宿泊型の自立支援施設を選ぶにあたって、どのような観点から施設を見るべきかについて意見を残しておきたいと思いました。

ひきこもりは、厚生労働省でも定義を出していますが、そこに年齢が定められているわけではありません。ひきこもりは若者だけの問題であるという誤解がずっとあります。青少年や若者政策のなかで「ひきこもり」という言葉が対象者の状態を示す言葉として使われ続けたことは大きな要因だと考えますが、年齢は無関係です。

もう15年以上前になってしまいましたが、全国32箇所の宿泊型支援施設に足を運び、その施設での宿泊を原則として訪問調査をしました。その調査をまとめた書籍を編集したことがあります。仲間と役割分担をしたので全部を私自身が訪問したわけではありませんが、実際に施設に宿泊することをこれだけ大規模にやった経験が、宿泊型施設を選ぶ際の観点に役立つのではないかと思います。

参考:『全国ひきこもり・不登校援助団体レポート 宿泊型施設編(プラットフォームプロジェクト,ポット出版, 2003) 』

15年以上前の調査をまとめた書籍ですので、現在読んでも参考にならないほど古い情報であることは付け加えておきます。

1.オープンな施設であるか

宿泊型の支援施設は、24時間365日をその場所で生活しますので、誰でもそこで自分の安全や安心が脅かされないか不安になるのは当然のことです。実際にどのようなひとたちがいるのか、しっかりした食事が出されているか、部屋が個室か相部屋か、お風呂やトイレは清潔か、スマホの電波が入るか、wifiはつなげられるかなどチェックすべきです。

そのためには施設の見学ができたり、入寮体験ができるなど、支援を希望する方々に対して施設を知る機会が十分に担保されているのかは大切なポイントです。

できれば複数の施設で体験比較をすることが望ましいと思います。いまはかなり施設の在り方も多様ですが、大きくは「家族生活型」と「寮生活型」に分けられます。

家族生活型とは施設オーナー(夫婦であることも多い)の自宅を拡張したイメージで、家族的な雰囲気の中で暮らします。そこではオーナーの子どもたちとともに生活をすることもあります。

一方、寮生活型は独立した寮があり、個室または相部屋方式で、食事や語らいの場としてのスペースが設けられています。まさに学生寮のように、夜は宿直担当の職員がつきます。

それ以外でも、集合スペースは持ちながらも、それぞれの入寮者が近くの一軒家やアパートに住みながら共同で暮らすものもあります。

どのような型にも一長一短がありますが、当事者にとって居心地がよいかどうかは宿泊してみないとわからないことが多く、だからこそ見学や体験の機会が提供されていることが重要です。

誰もが参加できる開かれたイベントの開催、定期的な説明会やセミナー、インターネットによる情報発信も施設を知り得る手段ではありますが、実際の生活に触れるという意味では、施設見学や体験が開かれていてしかるべきだと思います。

2.価格は妥当か

先に言ってしまえば、「いくらが妥当な価格か」はわかりません。それはエリアや地域にもよります。ただ、宿泊型支援というのは基本的に24時間365日でケアや支援がつきますので、一般的に考えれば高額にならざるを得ません。同じ条件にある介護関係施設の価格と比較するのもわかりやすいかもしれません。

私が知っている範囲ですと、やはり地方は安く都市部は高いです。15万円から25万円前後の月額費用で、入寮費や設備費が別にあるというのがスタンダードな印象です。この位の価格はどうしてもかかり得るのですが、もう少し調べるべきは、これ以外にどのようなコストがかかるかということです。

宿泊型の支援施設では、国内外の旅行や啓発的経験も多く準備されています。通常、それらは別途費用がかかるはずですが、年間イベントの頻度や内容について事前に確認しておくことをお勧めします。

特定のイベントは、あるひとにとって素晴らしい経験になっても、あるひとにとっては心身にダメージを負うこともあり得ます。入寮者や通所者など、希望者に開かれていながらも、全員が参加しなければならないという類のものではないはずです。

ピンと来られた方もいらっしゃるでしょうが、一家庭としての支払額としては非常に大きな金額ですが、経営運営からすればかなり厳しい価格です。

3. 入寮範囲を定めているか

宿泊型に限りませんが、他者を支えること、対人支援は対象者が全方位になればなるほど、広範な知識とスキルを持つ人材や、専門性を有する大きなチームが必要になります。ソーシャルワークによる多職種連携が重要ですが、すべからく困難な状況にある方を支えようとすれば、現場レベルでは軋みが生まれます。

それが宿泊型となれば生活をともにするわけですから、年齢や性別、国籍や困難性に対して非常に丁寧なケア、それを可能にする人材の質量が必要です。それらを大掛かりな施設でやるというのも選択肢としては考えられますが、私が知っている範囲では、自分たちの施設としてどのような方は入寮可能で、現状では十分な支援ができない方はどのような方かある程度の枠組みを持っています。

ここは明確なライン引きが難しいところですが、少なくとも「誰でも大丈夫」「とにかく何とかします」というのは、非常に難易度の高いものになります。その意味で、入寮範囲を性別や年齢、心身の状態によって、自分たちのできる範囲を定めているのは最もなことです。そして、相談の段階で他の支援機関や支援施設を紹介してくれるところは、自分たちのできることを理解しているとも受け取れます。

当事者やご家族が確認することは難しいものですが、周辺地域とのつながりがどの程度あるのかというのは、特にメディアの方には記事を書くときに追っていただきたいところです。正直、自立支援施設は一般の方からするとわかりづらく、最初は警戒されます。

しかし、長年そこで活動をしていれば、その施設や入寮者との接点がここかしこで生まれてきます。それは地域のイベントであったり、近隣のお店であったりします。少なからず誤解やトラブルもありますが、施設の職員が地道なコミュニケーションを重ねていれば、地域には受け入れられていきます。

人づくりとまちづくりは両輪です。地域活動への参画がなければ、自立支援はできません。地域に溶け込んでいくということは、地域を作っていくとき、その施設のひとたちも地域の一員としてさまざまな期待をされていきます。傍からは見えづらいところではありますが、いろいろなトラブルを含めて、施設にいるひとたちのことを笑って受け入れてくれる地域の方が多くいてくださるというのは、その施設そのものが信頼を得ているひとつの証左であると考えます。