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奨学金という名の借金を少しでも減らすためにできること。

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

先日、NHKで「奨学金受給 学生の53%に」というニュースがありました。

学生たちが1年間に使った金額は、平均で188万100円と前回の調査よりおよそ5万円多く、12年ぶりに増加しました。

使いみちは、学費が117万5500円、生活費が70万4600円で、学費の中でも授業料が87万1000円と、調査を始めた昭和43年以降で最も高くなりました。

一方で、学生の収入に占める保護者からの仕送りなどの割合は減っていて、奨学金とアルバイト料の割合が増え、合わせて37%となっています。

奨学金を受けている学生は53%と、これまでで最も多くなりました。

出典:NHKニュース 2014年2月27日

奨学金を借りる(奨学金は「借りる」ものなのかは疑問ですが)大学生が増えているということは、学費の上昇と共に、保護者がそのコストを負担することができない状況にあることが想像されます。「私はちゃんと奨学金を返済した」や「借りたものは返すのが当たり前」という声もありますが、短期的には就職難、中長期では不安定かつ賃金上昇が期待しづらい状況下で、実際に奨学金返済に苦慮していることや、卒業前から将来の不安を訴える学生がいることも報道されています。

奨学金を借りたために、卒業前から将来の不安を訴える学生もいる。

東京都内の私立大4年の男子学生(24)は、父親が失業したために家計が厳しく、母親のパートと自分のアルバイトだけでは足りないため、同機構から無利息と利息付きの奨学金を両方借りた。返済しなければならない金額は現在約850万円にも上る。「就職して返済するしかない」と考えた時期もあったが、もっと研究を続けたいという思いが強く、奨学金を借りて進学することを決めた。「大学院を終えたら死にもの狂いで返済するしかないが、『就職できなかったら……』と思うと不安になる」

都内の私立大4年の女子学生(22)は、シングルマザーの母親に負担をかけないために、アルバイトをしながら同機構から月6万4000円の奨学金を借りた。返済総額は約230万円。就職先は決まったが「就職1年目から、月々の返済ができるのか心配」と表情を曇らせる。

出典:YOMIURI ONLINE 2014年3月2日

給付型奨学金の拡充や、利息を下げること、返済期間や猶予の柔軟化など、さまざまなアイディアが出されますが、すべてが急に進むものばかりではないと思います。それでも確実に奨学金を借りる学生は毎年出てきます。

そのなかで少しでも将来への負担を減らす方法はないかと考えたとき、固定費である「家賃」を下げられると4年間でかなり楽になります。学生WALKERでは、2014年度の新入生に「みんなの家賃、どれくらい?」というアンケートをまとめています。

そこでは大学生の平均家賃が56,905円(前年比+2,255円)、平均管理費 2,572円(前年比-106円)、平均通学時間 28.6分(前年比+5.3分)とあります。大まかな固定家賃は60,000円程度です。単純に「もっと安いところはある」という意見もありますが、特に女子学生の場合だと、安さに対してのセキュリティがトレードオフになってしまうと不安ではないでしょうか。それなりに明るい通りにあったり、セキュリティ機能があればその分家賃は高くなります。しかし、さまざまな事件などを見れば女子学生に限らず、男子学生でも不安はあるはずです。まだ10代、20代前半ではじめての一人暮らしという方も多いと思います。

そんなときに、安全・安心を確保でき、家賃という固定費を抑えられる方法として「シェアハウス」の活用は有用であると思います。私は留学時代に自宅をシェアしていましたが、家賃以外にも生活面や勉強面でも大変楽で、楽しかったです。ただし、シェアハウスといってもいろいろな形態があるため、これから大学生となって一人暮らしとなると不安かもしれません。

来年度より、「チェルシーハウス」という学生のための新しいシェアハウスが始まり、現在、入居希望者現地説明会などを開催しているそうです。

まず家賃については32,000円(共益費別途14,700円)とあります。家賃平均が57,000円と考えれば25,000円の差額がでます。これが4年間(48ヶ月)だと家賃だけで1,200,000円が節約できます。共益費分を差し引いても500.000円から600.000万円程度節約できます。奨学金を借りる場合、大学卒業時の借金が50万円以上異なるため、これは結構大きいと思います。

他にも大学生を応援、サポートすることをうたっており、寮生8名に対して2名の社会人メンターが配置されており、寮内でのイベントが企画・運営されるそうです。自分の大学だけに留まらず、生活シーンを通じて、さまざまな学生や社会人とも関係性が創れるというのは、大変よい取り組みだと思います。こちらも共益費内と考えれば、サービス(サポート)として魅力的だと考える学生にとっては格安ではないでしょうか。

他にも、「WILLFU Startup Village」という学生起業家のためのシェアハウスというのもあります。家賃は37,000円から69,000円(別途光熱費等10,000円)。節約できるコスト、つまり、卒業時の借金が少なくなることは上記と同じですが、起業家である、起業家を目指す学生にとっては、経営者とのつながりやフィードバック、スキル学習がついてくるというのはとても刺激的ではないかと思います。

ただ、これらのサポートやサービスには興味ないという学生には魅力的にはうつらないものかもしれませんが、多様なシェアハウスという形態の住居を、卒業時の借金という観点から考えると、ひとつの選択肢になるのではないでしょうか。

どちらにしても、説明会や見学会、遠方の場合は電話などで詳細を聞き、判断をしなければならないというのは言うまでもありません。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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