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「戦争を知らない子供たち」から「バブルを知らない子供たち」へ

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 「戦争が終わって僕らは生まれた。戦争を知らずに僕らは育った」という歌詞をご存じであろうか。これは1970年に発表され、北山修が作詞し、杉田二郎が作曲した「戦争を知らない子供たち」という楽曲である。1970年8月23日に大阪万博でのコンサートで初めて歌われた。

 1958年生まれの私にとっては、当時12歳でまさに「戦争を知らない子供たち」のひとりであった。

 この戦争とは、太平洋戦争のことを指すと思うが、当時はベトナム戦争の真っ最中であった(武力衝突開始が1960年、終結は1975年)。これはベトナム戦争に対する反戦歌でもあった。

 ベトナム戦争については多少なり記憶はあるが、当然ながら太平洋戦争については戦後生まれの私にとって記憶はない。戦後の混乱期の記憶もなく、むしろ高度成長期となり、日本人の生活がやっと豊かになってきた時代からの記憶しかない。

 ところで、日経平均株価がここにきてバブル後の最高値を更新してきている。

 1985年のプラザ合意などをきっかけとして資産バブルが形成され、そのピークを迎えたのが1989年であり、この年の大納会で付けた日経平均の引け値での38915円87銭。取引時間中が38957円44銭がそれぞれの最高値として記録されている。

 この時のバブルは不動産と株式が注目されていたが、1985年あたりからは日本国債もバブル相場の様相を強めていた。そのバブル期に私は債券ディーラーとして日本国債を売買していた。

 株式市場でのバブル崩壊が始まったのが1990年からであり、やっとその水準に日経平均は戻ってきた。しかし、当時のことを実感として知っている年代は、すでに30年以上経過していることで、現場を退いている人がほとんどであろう。

 いまの現役世代は、我々の世代が「戦争を知らない」世代であったように「バブルを知らない」世代となる。

 いまの日本の株価がバブルであるかどうかは、弾けるまではわからない。ただし、毎日のようにバブル後の最高値を更新している姿は1980年代後半の動きにも見える。

 株価上昇の理由はあるとしても、日本経済の実態がそれほど強くなったとは思えない。これはバブル期もそうであった。「買うから上がる、上がるから買う」といった状態となっていた。

 当時の経験が生きるかどうかはわからない。しかし、「あれ、何か変だな」と感じたのであれば、バブル期とバブル崩壊時の状況を確認することも必要かもしれない。また2001年のITバブルの崩壊時の状況なども再確認しても良いかと思う。

 いまはバブルだから株は買うなと言っているわけではない。上昇気流に乗ってみることも経験上は必要かと思う。ただし、このまま永遠に上がり続けることはないことも肝に銘ずべきだと思うのである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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