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ドル円は1990年以来の円安ドル高水準に、では34年前の1990年には何が起きていたのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 ドル円は1990年以来およそ34年ぶりの円安ドル高水準を付けてきたが、その1990年(平成2年)にはいったい何か起きていたのかを振り返ってみたい。

 当時、私は債券ディーラーではなく経営企画室で1990年4月から1年ほど上場に向けた仕事をしていた。1986年に債券ディーラーとなってから2001年に退社するまで、ディーラーでなかったのがこの1年だけであった。

 その1990年であるが、私の「債券ディーリングルーム」にアップしている「国債の歴史年表」では下記のように記している。

1月  日銀、短期国債買いオペを初めて実施

3月  日銀、公定歩合を1.0%引上げ5.25%に

4月  特例国債発行ゼロ

    大蔵省、割引短期国債と政府短期証券の売買単価を1千万円に引き下げ

5月  東京証券取引所に先物オプション上場

    日銀ネットによる国債関係事務の対外オンライン処理を開始

8月  日銀、公定歩合を0.75%引上げ6.00%に

    イラク軍、クウェートに進行

9月  CME、日経平均先物と同先物オプション取引を開始

    CBT、日本国債先物とTOPIX先物と両者の先物オプション取引を開始

10月 シ団10年債の入札割合を40%から60%に拡大

11月 大蔵省、普通社債・転換社債・新株引受権付社債の適債基準および財務制限条項の見直しを実施

12月 日銀、短期金融市場の見直しを発表(手形オペの対象範囲を公社債や外貨手形を担保とする手形に拡充等)

    日銀ネットによる長期国債募集・引受・発行事務のオンライン処理を開始

 平成の鬼平と呼ばれた三重野日銀総裁が就任したのが1989年12月であり、12月に日銀は当時の政策金利である公定歩合を0.5%%引上げ4.25%とし、1990年に入っても2度公定歩合を引き上げていた。

 1990度予算では特例国債発行額はゼロとなって、1975年度以来継続していた特例国債への依存から一時的に脱却し、以後1993年度までこの状態が続いた。

 もうひとつ注目すべきはイラクがクウェートに侵攻した事件であり、湾岸戦争の発端となった。この年も中東の地政学的リスクが高まっていたのである。

 東京証券取引所には先物オプションが上場された。

 日銀ネットによる長期国債募集・引受・発行事務のオンライン処理を開始ともあるように、当時はネットはなく、やっと国債事務などが日銀ネットによってコンピュータ処理されるようになった年でもあった。

 スポーツでは6月8日にFIFAワールドカップイタリア大会が開幕。

 10月3日に西ドイツに東ドイツが編入される形で統一された。

 11月21日に任天堂がスーパーファミコンを日本で発売。

 11月22日には英国のサッチャー首相が辞任し、11年に及ぶ長期政権が終わる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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