市場の一歩先へという日銀への違和感
どうやら日本経済新聞の「異次元緩和 近づく出口」という特集記事は3部構成となっているようで、29日には「中」として「市場の一歩先へ、動き出した日銀 後手に回るリスク警戒」と言うタイトルの記事が出ていた。
どうもタイトルからして違和感がある。この特集の「上」では「マイナス金利解除、日銀が地ならし ショック回避探る」とあったので、タイトルそのものにはさほど違和感はなかった。しかし、今回のタイトルは「?」であった。
元々は2年で2%を達成するとしており、それを10年以上も引っ張って、今度は2%を数値上達成しても、緩和の方向すら変えなかった日銀に違和感を持たぬ市場参加者は少ないはずである。
一歩どころか、地球一周ぐらい遅れて、動きだそうとしているのか。「動き出した」という表現そのものにも違和感がある。円安や物価対応を求められ、しかたなくイールドカーブ・コントロールの修正は行ったが、それでも緩和の方向しかみていない姿勢を変えていない。
後手に回るリスクをいまごろになって警戒しているというのもおかしい。ただし、この記事のタイトルから見え隠れするのは、金融緩和一辺倒の姿勢をやっと変えようとしている、そのための今回の日経記事ではないかということである。
日銀がおかしな政策に陥っているとみている私からすると、いまさら何をというタイトルだが、これが現執行部からの素直な意見であるとすれば、やっと動くのかという見方もできる。
その動く理由を今回の日経新聞を通じて示すことで、長期金利に続いて、長らくマイナスに陥っていた短期金利も動く可能性を示唆したということなのか。
むろん、短期金融市場の参加者が何も準備していなかったとは思えないし、いつマイナス金利政策が解除されても大丈夫なように準備は進めていたはずである。
長期金利コントロールも結局は市場によってその修正を迫られた格好となったが、それでもいまのところ大きな混乱は起きていない。これは日銀が慎重に行ったからというよりも、市場が長期金利上昇をむしろ欲していたためともいえよう。これは短期金融市場も同様であろう。
はっきりいって金利は動かなければ、金融機関にとっては仕事にならない。さらに金利が動くことによって経済の潤滑油ともなりうる。今後金利が上昇するとみれば、設備投資を急ぐといった動きも出てこよう。
いずれにせよ、今回の記事のタイトルからみて、これは政策運営の中心にいる副総裁の内田真一氏とその執行部が、今後の政策について示唆してきたものと捉えたほうが良いのかもしれない。