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7月28日の日銀の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロールが修正される可能性

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 7月27、28日の日銀金融政策決定会合では、展望レポートが発表されるが、ここで物価の見通しを引き上げることが予想され、それとタイミングを合わせて、何かしらの政策修正が入る可能性が出ていた。

 FRBは6月に利上げを見送ったものの、FRB関係者の発言などから今後さらなる利上げを行う可能性が高まってきた。これを受けて米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大観測から円安も進んだ。6月30日にドル円は一時145円台を付け、介入警戒も出てきたがそれとともに、動かない日銀に対しての批判も強まりつつあった。

 そんな最中に日銀の金融政策を決めるにあたってのキーマンともいうべき内田副総裁によるインタビュー記事が7月7日に出てきた。7月10日には日銀支店長会議も控えているタイミングでの、このインタビューは何かしらの意図の元に出したものであろうことが窺える。

 インタビューで内田副総裁は、当面はYCCを続けていくと強調していた。早期のYCC解除を望むものとしては、これはやっぱりかと失望させるものであった。ただし、ここで注意すべきは、当面はYCCを続けていくと強調していた、つまりYCCの解除は行わないものの、修正については言及していなかった点である。

 さらに「イールドカーブがスムーズになっているのは事実。ただ、コントロールしている以上、市場機能に影響を与えていることは強く認識している」との発言があった。これは、市場機能に影響を与えていることを認識しており、それの対応も考慮しているとも読めるものであった。

 「いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」

 このバランスという言葉をどう取るべきか。マイナス金利政策の解除とイールドカーブコントロールの修正・解除については切り離して考えるということを示している可能性もあった。つまりこの内田副総裁の発言は、7月28日のYCC修正の可能性まで否定するものではなかったのである。

 植田総裁も以前に指摘していたが、イールドカーブコントロールの修正・解除についてはサプライズとなってしまうことが避けられない。しかし、市場に徐々に織り込ませるということはできなくもない。日銀はサプライズによる影響を軽減させるために、内田副総裁の発言でそれを示唆してきた可能性もある。

 これはあくまで憶測であり、28日の金融政策決定会合で本当にYCCの修正が入るのかどうかは決定会合次第ではある。それでも長期金利コントロールのゾーンを±0.5%からたとえば±1.0%へのレンジ拡大を決定する可能性はありうるとみている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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