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米国の消費者物価指数の上昇率が鈍化し、卵の価格も下落

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米労働省が13日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が4.0%となった。4月は4.9%から鈍化した。11か月連続の鈍化となった。2022年6月につけたピークの9.1%からは上昇率は半分以下になった。

 エネルギーと食品を除くコア指数は前年同月比で5.3%上昇。4月の5.5%から鈍ったもののペースは総合指数より遅く、5%台を維持していた。

 13日の米国市場では、総合指数の伸び鈍化を意識して株式は買われたが、コア指数の高止まりが意識されて米債は売られた格好となった。

 この5月の米消費者物価指数によると、鶏卵価格は前月比で13.8%下落していた。

 下落率は過去最大だった1951年1月以来、72年ぶりの大きさとなった。鳥インフルエンザの拡大に伴う供給不足で高騰が続いてきた鶏卵価格は、歴史的な高値からピークアウトしてきた(14日付日本経済新聞)。

 卵の価格は4か月連続で前月から下落した。過去最高値となった1月時点と比べると29%下がった。これをみても世界的な食料や原材料価格については、かなり落ち着きを取り戻してきたといえる。

 それでもFRBの物価目標値の2%からは大きく乖離している。13、14日のFOMCでは利上げがスキップ(一回休み)された。市場の関心は7月に利上げを再開するのかどうかに移っている。現時点では何とも言えないが、いったん利上げを停止してくる可能性もあるか。

 原油価格をみてもWTI先物が70ドルを割り込むなど、こちらも昨年付けたピーク前の水準に落ち着いてきた。

 日本でも企業物価指数が2022年12月の10.6%をピークに下落基調にある。12日発表した5月の企業物価指数は前年同月比で5.1%上昇となっていた。5%以上で推移するのは24か月連続となった。

 物価にピークアウト感が見えてきたことはたしかであると思う。それによって日銀が期待しているように今年度下期にコアCPIの前年比上昇率が2%を下回るのかどうかは極めて不透明である。価格転嫁が今後も進むと予想されているが、それよりも人件費が今後さらに上昇してくる可能性もあろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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