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デジタル人民元は有用性が乏しい模様

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 中国人民銀行(中央銀行)が発行する中央銀行デジタル通貨の「デジタル人民元」は今のところ有用性が乏しい――。独立系メディアの財新は、人民銀元幹部の謝平氏が29日に清華大学で開催された会合でこうした見方を示したと伝えた(12月30日付ロイター)。

 デジタル人民元とは、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、CBDC)と呼ばれるものとなり、それ自体が法定通貨となる。

 中国は2020年、蘇州、深セン、成都などの都市でデジタル人民元の実証実験を開始した。デジタル人民元の発行の大きな目的として、4大国有商業銀行を保護することが挙げられていた。

 中国政府はアリババなどのIT企業の金融事業に対して徐々に規制を強め、民間によるデジタル決済そのものも狙い撃ちしていたように思われる。つまりこれはデジタル通貨の流通も4大国有商業銀行がメインに行うということが前提にあったのではなかろうか。

 人民銀の調査部門責任者を務めた謝平氏は、特定の省と都市におけるデジタル人民元試験運用の結果に失望感を表明。「過去2年の試験運用で流通したデジタル人民元はわずか1000億元(140億ドル)にすぎない」と語り、非常に低調で動きが鈍いことが分かると付け加えた(30日付ロイター)。

 試験地区では2022年、30回近くデジタル人民元補助金が提供された。謝平氏は「結果は望ましい形ではない。デジタル人民元が単なる現金の代役で、消費だけに使われている状況を変える必要がある」と訴えたそうである。提供されたデジタル人民元がただ使われただけのようである。

 日銀も中央銀行デジタル通貨の実証実験をスタートさせたが、先発組ともいえる中国では、中央銀行デジタル通貨の利用の結果は思わしくはないようである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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