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FTX創業者バンクマン・フリード氏、バハマで逮捕。共謀や電子詐欺、多額の顧客資金流用など8件の罪に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 バハマ当局は12日、米国の要請に基づき、経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングの創業者で前最高経営責任者(CEO)のサム・バンクマン・フリード容疑者を逮捕した。米連邦検察が12日、公式ツイッターで逮捕したことを明らかにした(13日付日本経済新聞)。

 この記事が出た際には、容疑は明らかになっていなかった。米メディアの報道によると米当局は同容疑者が仮想通貨の相場操縦に関わったとして捜査を進めていたようである。FTXはバハマに本拠地を置いていた。米国は引き渡しを要求するとみられる。

 その後の報道によると、サム・バンクマン・フリード被告は、共謀や電子詐欺、多額の顧客資金流用など8件の罪で起訴された(14日付ブルームバーグ)。

 11月11日に暗号資産の交換業大手、FTXトレーディングは、自社と日本法人を含むおよそ130のグループ会社が連邦破産法第11条の適用を米国の裁判所に申請し、経営破綻したと発表した。同社はずさんなリスク管理や企業統治の不全の結果、資金繰りに行き詰まったとされる。

 今回の危機の引き金となったバンクマン・フリード氏の投資会社、アラメダ・リサーチであった。アラメダ・リサーチはバンクマン・フリード氏が2017年に設立したトレーディング会社である。仮想通貨やブロックチェーン企業への投資を行ってきた。

 FTXは暗号資産取引のために約100万人とされる顧客から預かった160億ドルのうち、約100億ドルをアラメダ・リサーチに貸し付けていたとの指摘もあった。

 アラメダ・リサーチの資産のうちの多くはFTXの独自トークンであるFTTおよび担保FTTで構成され、実際の現金は少額しか保有していなかった。

 これが発覚したことでアラメダ・リサーチの財務の脆弱性が顕著となった。

 顧客はFTXに預けた自身の資産が取り戻すことができなくなることを恐れ、それを引き出そうとした。いわゆる金融機関での取り付け騒ぎの状態となったが、既にFTXの口座から暗号資産や現金を引き出せなくなっていた。

 11月7日には、世界最大級の仮想通貨交換業者であるバイナンスのCEOであるチャンポン・ジャオ氏が保有しているFTTの売却を決断したと発表。そのあとに、FTXの買収を発表したものの、今度は11月10日に、バイナンスは一転してFTXの買収を断念したことを発表。

 結局、日本時間の11月11日夜に日本の民事再生法にあたる米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。

 破綻後、「破産管財人」のような立場でFTXのCEOに就いたジョン・レイ氏が裁判所に提出した書類によると、FTXの経営はずさんで、財務諸表の正確性に疑問があるほか、会社の資産がバハマで個人の住宅購入に用いられている例もあったという。11月末には、FTXから金融支援を受けていた米ブロックファイも経営破綻。連鎖破綻に発展している(13日付朝日新聞)。

 破綻に至る経緯を解明するため、米下院の金融サービス委員会が13日に開く公聴会に、バンクマン・フリード容疑者はオンラインで参加する予定だった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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