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長期金利操作をしていたオーストラリアの中央銀行の反省文

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀とともに、というよりも日銀の政策をみて、それではうちもと長期金利コントロールをしていた中央銀行が世界にもうひとつ存在していた。それはオーストラリア準備銀行である。ただし、対象の国債は日銀のように10年債ではなく期間の短い3年債となっていた。

 オーストラリア準備銀行は昨年10月22日、2月以来初めて2024年4月償還国債を額面10億豪ドル買い入れると発表した。つまり利回り目標を維持する動きに出ていた。

 同月27日に発表されたオーストラリアの7~9月期のコアインフレ率は6年ぶりに2%を超えた。これを受けてのオーストラリア準備銀行による市場への介入は控えていた。

 29日にオーストラリア準備銀行は市場の予想に反し、3年国債の利回りを0.10%前後の目標水準に抑制するための対応を行わず、国債を購入する計画も公表しなかった。

 オーストラリア準備銀行(中央銀行)は、昨年11月2日に開催された政策決定会合に3年国債の利回り目標によるイールドカーブ・コントロールを停止すると発表した。

 そして、今年6月にそのオーストラリア準備銀行は、イールドカーブ・コントロールに関するレビューを発表していた。

「Review of the Yield Target」 https://www.rba.gov.au/monetary-policy/reviews/yield-target/index.html

 このなかで最後に下記のような記述があった。

 「If circumstances warranted considering the use of unconventional monetary policies in the future, any use of a yield target would require close attention to the lessons learned from this experience, and a careful assessment of the costs and benefits of alternative tools.」

 もしも将来、再び非伝統的な金融政策を行う必要性が出てきた際に、長期金利コントロールを使うとしたら、今回の経験から学んだ教訓に細心の注意を払い、代替ツールのコストと利点を注意深く評価する必要がある。

 遠回しながらも、長期金利コントロールは非伝統的な金融政策手段としては使うならば慎重にすべきであり、今回の反省からは使うべきものではないとしている。

 それに対して日銀は、イールドカーブ・コントロールを頑なに守り、その結果、6月の国債買い入れ額が16兆円にも達した上、債券先物の機能も奪うという政策まで実施している。

 当然ながら今回のオーストラリア準備銀行の今回の資料にも日銀は目を通しているはずである。本来であれば、この反省を生かして、日銀もイールドカーブ・コントロールを強化するのではなく、それを廃する準備を進めるべきであった。いや、いまからでもそれを進めるべきである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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