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トルコは通貨安で物価高騰、中国人民元は急落、いずれも金融緩和を行っている国なのだが、そういえば。。。

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 トルコ統計局が5日発表した4月の消費者物価指数の前年同月比上昇率は69.97%と、2002年2月以来約20年ぶりの高い伸びを記録した。昨年の通貨危機をきっかけに始まったインフレが、ロシアのウクライナ侵攻の影響による食品とエネルギーの価格上昇加速で一段と高まった(6日付ロイター)。

 昨年、トルコの中央銀行は物価が上昇しているにもかかわらず、大規模金融緩和を実施した。これによって通貨リラの急落を招き、輸入物価上昇を通じたインフレにつながった。トルコのエルドアン大統領は金融緩和策によって生産と輸出を促進し、経常黒字化を目指すとしており、物価高にも関わらず金融緩和を実施させて通貨安を招き、物価をさらに上昇させるという悪循環に至っている。

 そして6日午前の取引で、中国の人民元が急落した。オンショアとオフショアがともに対ドルで2020年11月4日以来の安値水準に落ち込んだ(6日付ロイター)。

 ここにきて中国の人民元は下落傾向にあった。新型コロナウイルスの感染拡大を止めるための上海などでのロックダウンが行われており。これによって中国経済の成長率の低下が懸念されているため、人民元が売られた側面がある。

 中国の3月の工業品卸売物価指数は前年同月比で8.3%上昇と大きく上昇しているが、3月の消費者物価指数が前年同月比で1.5%の上昇にとどまっている。とどまっているとはいっても上昇率は前月から0.6ポイント上がった。これは国際的な原材料価格の上昇の影響などを受けたとみられ、今後はインフレが加速する懸念も出ている。

 消費者物価指数が低位で推移していたこともあり、中国人民銀行は景気対策として預金準備率引き下げなど金融緩和策を行ってきた。これも人民元の下落要因となり、通貨安によって物価をさらに上昇させるという悪循環に陥る可能性がある。

 トルコや中国以外にも強力な金融緩和を継続している国がある。この国も通貨安が進むリスクがあるとともに、4月の消費者物価指数は2%を超える可能性がある。そうなると消費増税の影響を除くと30年ぶりとなる。世界的に物価上昇圧力が強まっているなかにあって、金融緩和策を継続するというのは、なかなかのリスクを抱えているように思われるのであるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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