円安加速、ドル円は20年ぶりの128円台。130円あたりまで節目らしい節目なく、黒田ショックの様相に
19日の東京時間にドル円は早くも128円台をつけてきた。2002年5月以来およそ20年ぶりの円安ドル高水準となる。
2002年5月に何があったのかを調べてみたが、特に大きな出来事があったわけではない。しかし、当時の日本の債券市場では格付会社による日本国債の格下げの可能性が意識されていた。
2002年4月26日に財務省は欧米の格付会社三社に対して、日本国債の格付けに関する異例の「意見書」を出していた。それは黒田財務官名で送付されていた。現在の黒田日銀総裁が財務官であった時代である。
その黒田総裁がここにきても「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」との見解を示しており、緩和に向けた傾斜角度が維持されることで、利上げを急ぐFRBとの金融政策の方向性の違いがさらに顕著となった。これにより円安が急ピッチで進む格好となっている。ある意味、黒田ショックともいえる現象かもしれない。
この円安には日本の経常収支の赤字慢性化リスクも一因となっているが、主因は日米の金利差拡大にある。
まず短期金利については、日銀の政策金利がマイナスに対し、FRBは0.25%。これが5月には0.75%以上になると予想されている。日銀がマイナス金利政策の解除などを急がなければ、いずれ2.5%から3.5%あたりまで格差が拡がることが予想されている。
長期金利については、日銀の長期金利コントロールによって日本の長期金利は0.25%に抑えられている。それに対して米国の長期金利、米10年債利回りは2.84%(19日14時現在)となっており、格差は2.6%程度ある。米国債利回りは市場で決定されるため、絶対は言えないもののいずれ3%あたりまで上昇してくることが予想されている。
このように日銀が頑として異次元緩和の姿勢を改めない限り、日米金利差は長期、短期ともに開く一方となる。さらにドル円のチャート上も130円あたりまで節目らしい節目がなく、ドル買い円売りが入りやすくなっている。
ここにきての急速な円安ドル高の背景には、円買いドル売りをしていた投資家がストップロスなどからそのポジションの巻き戻しを入れてきたことが主因ではないかと思われる。
そうでなければこのようなスピードの円安は考えづらい。むろん、それを誘い出す仕掛け的な動きも当然入っていたとみられる。ややスピード違反という気もしなくもないが。
G20でこの円安ドル高についても話し合われるかもしれない。しかしすでに欧米の中央銀行が正常化に向けて姿勢を修正しているなか、日銀の現在の緩和の姿勢が本当の意味で理解されることは難しい。
円安ドル高の主因が日銀の頑なな姿勢である限り、それに対しては自分たちで何とかすべきという意見となろう。ましてやインフレが大きな懸念材料となっている米国が、ドル高に対して何かしら手を貸すことも考えづらいこともたしかである。