ドル円は20年ぶりの127円台、さらに円安が加速する恐れがあり注意が必要、為替介入は困難
18日のニューヨーク外国為替市場でドル円は127円をつけてきた。127円台をつけるのは、2002年5月以来、約20年ぶりとなる。
この日の米長期金利は一時2.88%に上昇していた。その背景にあるのがFRBによる利上げ加速の思惑となっていた。5月のFOMCでは0.5%の利上げの可能性が強まっているが、0.75%もあるのではとの観測も出ていた模様。
円安要因はこれだけではない。18日に日銀の黒田総裁は、最近の円安は「かなり急速な為替変動」とした上で、経済への影響は「非常に大きな円安とか、急速な円安の場合はマイナスが大きくなる」と話した。
これは円安にブレーキを掛けそうなものであるが、黒田総裁は円安が全体としてプラスという評価は変えたわけではないとしつつ、「より注意して見ていく必要がある」と語った。金融政策については、2%目標の実現を目指して緩和を続けることが適当との考えを改めて示していた。
つまり基本的な考え方に変わりがなく、今回の大きな円安、急速な円安の発言の背景には、20日から開かれる米国ワシントンで23か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に向けて、財務相と日銀総裁の円安についての意見の修正というか、すり合わせをしてきたものと推測される。
黒田発言を受けて、一時ドル円は下落したもののすぐに切り返しており、市場も黒田総裁の発言を円高要因とは認識はしなかった。むしろここから円安の動きが強まった。
ドル円のチャートも127円台を付けたことで上抜けた格好となり、ここから130円あたりまで節目らしい節目はない。このため、さらに円安が進行する可能性が高い。
経団連の十倉雅和会長は18日の定例記者会見で、足元の円安について「金融政策をいじって為替をどうこう、という議論は時期尚早だ」と述べた。日米の金利差の拡大が円安の一因とされるが、あくまで日本銀行は金融緩和策を続けるべきだという認識を示した(18日付朝日新聞)。
円安の良しあしで金利を操作すべきでないとの考えを示したが、それはそうではある。しかし、今回の円安の大きな要因は、日銀の金融政策に根本的な欠陥があるためである。少なくともその欠陥を修正しなければ、円安を加速させ、輸入物価の上昇を通じて企業物価指数や消費者物価指に大きな影響を与えかねない。
その日銀の金融政策における根本的な欠陥というのが、前にしか進めないことである。日銀金融政策決定会合の公表文には「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」としか書かれていない。つまり緩和の修正なり正常化は完全な棚上げ状態になっている。ブレーキを掛けられない状態で高速道路を突っ走るクルマのようになってしまっているのである。
何もいますぐ米国並に日銀が利上げをしろというわけではない。非常時対応であったはずの金融緩和策を継続、もしくは強化することばかり考えず、緩和策を緩めるなり、正常化の可能性も同時に示す本来の金融政策に戻すべきといっているのである。
この修正がない限り、日米の金利差の縮小は考えづらく、その結果として、さらに円安を加速しかねない。ここに経済収支の赤字も絡むことで、円安にはブレーキが掛かりづらくなっている。
為替介入の思惑も出ているようだが、少なくとも物価上昇に苦しむ米国の理解が得られるとは思えない。円売りドル買い介入と違い、円買いドル売り介入となれば、売るためのドルの保有量にも限度があるというテクニカルな面もある。
そもそも今回の円安の大きな要因が日米金利差であるならば、どうして日銀は緩和一辺倒姿勢を修正しないのかと米国サイドからも疑問を投げかけられる可能性も当然あろう。