どうして原油価格が急騰しているのか
日本時間7日のロンドン市場で、北海ブレント原油先物の期近物が1バレル139.13ドルまで上昇し、2008年7月以来の高値を付けた。米国市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の先物は一時130.50ドルと期近物として2008年7月以来の高値を付けた。
米国のブリンケン米国務長官が6日のCNNのインタビューで「欧州の同盟国・有志国とロシアから原油輸入を禁止する可能性について協調して検討するよう協議している」と表明した。ロシアの主要エネルギー産業の締め付けを通じ、ウクライナ侵攻への対抗措置を強化する。
しかし、これは世界生産の1割を占めるロシアからの供給が減ることとなり、原油需給がさらに逼迫するとの警戒感が強まり、原油先物価格が急騰したのである。
8日の日本経済新聞によると、国際エネルギー機関(IEA)のデータなどによる推計では、ロシアからの西側諸国向け輸出が3月からすべて途絶えた場合、2022年の平均で日量400万バレル程度の不足に陥り、2020年の日本の石油消費(同330万バレル)を上回る規模になるとか。
2日に中東やロシアなどの産油国でつくる石油輸出国機構(OPEC)プラスは、閣僚級会合を開き、4月も小幅増産を継続することを決めた。今後、OPECプラスが大幅な増産に踏み切ることは難しい。
イラン核合意再建協議が近くまとまり、原油供給が増える可能性があるとの期待もあるが、本当にまとまるのか、まとまったとしてもどれだけカバーできるのかはわからない。
原油先物価格が最高値を付けたのは2008年7月11日であった。この日のWTI先物価格は1バレル147.27ドルに達した。ブラジルやナイジェリアからの供給が落ち込む中、イスラエルがイランの核開発プログラムを攻撃する準備をしているとの懸念を背景に急騰した。
ただし、この際の原油価格の上昇の背景には、中国やインドなど新興諸国を中心とした世界的な需要増加があった。
今回の原油価格上昇の背景には、世界的な経済の正常化による原油需要の増加があった。そこにブリンケン米国務長官の発言を受けた供給不安によって価格上昇が加速された格好となり、WTIは一時130ドル台を付け、2008年7月の最高値に接近してきたのである。状況が変わらなければ、最高値を更新してくることも予想される。
原油価格の上昇は消費者物価指数の大きな上昇要因となる。2008年7月の日本の消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年同月比はプラス2.4%と直近でもっとも高いものとなっていた。
原油価格の上昇はガソリンや灯油などエネルギー関連ばかりでなく、電気料金やガス料金、さらには石油を原料としている石油商品の価格にも影響を与えうる。石油製品の20%は原料として使用され、ナフサなどによりプラスチック製品、ペットボトル、ビニール袋、化学繊維を使用した衣料品などが作られている。
1970年代のオイルショック時にはトイレットペーパーが店頭からなくなるなどパニック状態となった。しかし、2008年の原油価格の上昇の背景は中国などの新興国の需要拡大を睨んだ仕掛け的な動きでもあった。
その結果、日本の消費者物価指数(除く生鮮食料品)が2%を上回ったのは7月から9月までであり、その後は大きく落ち込み、2009年1月にゼロ、3月には前年比マイナスに陥った。
2008年9月にはいわゆるリーマン・ショックが起きている。原油価格が上昇していた最中、リーマン・ショックへと繋がるサブプライム問題がすでに発生しており、原油価格の上昇は長続きはしないなという予感はあった。
しかし、今回については先は見通せず、原油価格の上昇については一時的だと限定はできない状態にあることも確かである。