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手数料対策の一環として、一円硬貨と五円硬貨の利用を制限してはどうか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 ゆうちょ銀行では、1月17日から硬貨で預け入れをする際などに枚数に応じて手数料がかかるようになった。窓口では硬貨の種類にかかわらず50枚までは無料だが、51枚から100枚までは550円。101枚から500枚までは825円、501枚から1000枚までは1100円でこれより多い場合は500枚増えるごとに550円加算される。

 すでにゆうちょ銀行以外の金融機関では、硬貨で預け入れをする際などに枚数に応じて手数料が徴収されていた。このため、硬貨の決済が多い商店や、さい銭を扱う寺や神社などでは、ゆうちょ銀行が最後の砦となっていた。

 しかし、そのゆうちょ銀行も手数料を取らざるを得なくなった。日銀によるマイナス金利政策やイールドカーブコントロールによって、金利での利ざやが取りづらくなり、金融機関の経営を圧迫している。大量の硬貨の扱いは銀行の窓口業務にとってかなりの負担であったことも確かである。

 1円玉を1000枚預けると1100円かかってしまうのであれば、当然ながら手数料を払って引き取ってもらうようなことになってしまう。

 税金の支払いには枚数制限はないとのツイートも見かけたが、税金の支払いをすべて小銭で済ませるというわけにも行かないであろう。

 この際、神社などの負担軽減策の一環として、一円硬貨と五円硬貨の利用制限を検討してはどうであろうか。プリペイントカードなどによるキャッシュレス化が進み、小銭を使う機会が減っている人も多いのではなかろうか。

 すでに1円玉の流通量は2002年をピークに減少傾向が続いており、2021年度は100万枚の製造が計画されている。しかしそのすべてが、コレクション向けの貨幣セット用であり事実上、新規製造はストップしている。今後は日銀で一定数を回収したままにして流通量を削減してはどうであろうか。

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、ユーロ加盟国で1セントおよび2セント硬貨の流通を段階的に廃止することを検討している。硬貨の製造・管理コストが額面を上回っているという加盟国も多く、経費削減につながることが期待されている。

 日本でも小口決済、つまりスーパーやコンビニなどでの一円硬貨と五円硬貨の利用を制限し、現金の支払いの際の税込み価格を10円単位とするというのはどうであろう。ただし、WAONなどの電子マネー利用時は円単位で決済できるようにするとか。

 これでは電子マネーの利用ができない地方の小売店などでは不利になってしまうとの意見もあるかもしれない。しかし、今後はさらに一円硬貨と五円硬貨の利用は減っていくことが予想される。完全に使えなくすることは難しいが、流通量を減少させ、実質的に利用ができないようにすることは可能ではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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