米国のデフォルトはいったん回避されたが、問題を先送りしただけに
米議会下院は12日、連邦政府の借り入れ限度を定めた「債務上限」を12月3日まで一時的に引き上げる法案の採決を行い、賛成多数で可決した。法案は上院を通過しており、バイデン大統領の署名を経て成立し、米国のデフォルト(債務不履行)が当面回避される見通しとなった(13日付時事通信)。
債務上限問題をめぐっては、与党民主党と野党共和党の対立が激化していた。しかし、デフォルトリスクが意識され、市場にも動揺を与えかねないこともあり、共和党が短期間の債務上限引き上げを提案、これを民主党が受け入れ、法案は上院を通過した。ただし、これは根本的な解決とは当然ならない。
米国は連邦議会が定めた第二自由公債法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できる形式となっている。
これはつまり、連邦債務残高が上限を超過した場合には、限度額を引き上げない限り、新規の米国債発行が出来なくなる。
ただし、特例措置として2019年7月の財政合意で債務法定上限の適用を2年間だけ除外されていた。債務上限を定める法律の2年間の適用停止が2021年7月末に期限を迎え、8月1日から法定上限が復活した。今回、資金が枯渇する前になんとか、その適用停止期間を少し先送りしただけとなる。
米シンクタンクの推計では、政府が公的年金基金への支払い制限など「特例措置」で支出を抑制すれば、12月中旬から2022年1月までの資金繰りを確保できる可能性がある(13日付毎日新聞)。
遅くとも年内から来年の1月あたりまでに債務上限を引き上げるか、それとも今回のような再延期の措置をとらざるを得ない。しかし、与党民主党と野党共和党の対立は続くことが予想され、再びデフォルトの危機が意識されることも予想される。