Yahoo!ニュース

米国では新型コロナウイルスの新規感染者が過去最悪となり、株式市場はこれを材料視

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国では23日の新型コロナウイルス感染者が過去最悪となる8万3000人余りの増加となった。ニューヨーク州とニュージャージー州での新規感染者数が5月以来の高水準に達した。

 22日の米大統領選のテレビ討論会でトランプ大統領は「感染拡大は峠を越えた」と述べ、収束が近いとの見方を示したものの、それには根拠は乏しい。メドウズ大統領首席補佐官は新型コロナウイルスの感染拡大を「制御」するつもりはないと言明していた。

 メドウズ大統領首席補佐官は感染拡大の封じ込めではなく、ワクチンと治療に集中するとの発言があったが、トランプ大統領の発言などからもやはり大統領自身も同様の考えかと思われる。

 新型コロナウイルスの感染拡大は止まっておらず、感染防止と経済活動とどちらを優先するのが正しいというのか結論は出ていない。しかし、少なくとも経済活動を優先した結果、感染者数とともに死者も米国は増加していることで、ある程度の押さえ込みは必要ではなかろうか。

 米国で新規感染者が過去最悪となったことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大に対する経済政策の取りまとめが大統領選挙終了までは困難かとの見方から、26日の米国株式市場は大きく売られた。米国市場で新型コロナウイルスの感染拡大が直接材料視されたのは久しぶりではなかろうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないのは欧州などでも同様となっている。スペインとフランスで累計の感染者が100万人を超えた。各国は夜間の外出を禁止したり、飲食店の営業時間を大幅に短縮したりするなど相次いで対策を打ち出している。

 26日の欧州株式市場も下落した。今後、あらためて新型コロナウイルス感染拡大とそれによる景気への影響が、金融市場で材料視される可能性がある。

 特効薬やワクチン開発への期待も出ていたが、これらが容易でないことも次第に明らかになってきた。ワクチンなどへの過剰な期待は感染をさらに拡大させる恐れがある。

 あと一週間程度で米国の大統領選挙が行われる。その結果にも新型コロナウイルスの感染拡大は影響してくる可能性があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事