緊急事態宣言で金融市場はどのように変わったのか
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、4月7日から実施されていた緊急事態宣言が、5月25日に全面解除された。緊急事態宣言により経済活動や人の移動が制限された。これは各所に大きな影響を与えたものとみられる。このうち特に金融市場に与えた影響についてみてみたい。
金融市場の主な参加者は銀行や証券、生保などの金融機関に属している人が多い。財務省や日銀、取引所など公的機関もしくはそれに近い機関に属している人も含まれよう。また、金融情報を流しているメディアなども含まれる。
金融取引そのものについては銀行などの金融機関は通常業務を継続していた。緊急事態宣言により、公的金融機関を含めて融資などの業務は重要度がむしろ高まった。しかし、預金などの業務は限られていたとみられる。
市場取引については、日本国内では東京証券取引所など電子化が進んでいたことで特に支障はなかった。先物などデリバティブも大阪取引所での電子化が進み、と取引は継続されていた。
ただし、金融機関の都心本店などのトレーディング業務でも、ある程度の出社人数を制限しなければならなかったはずである。金融機関での金融商品の取引については、守秘義務があるとともに、端末が本店ディーリングルームなどに集中していることもあり、個々人のリスク管理の上からも、テレワークには適さない。
このため市場参加者の厚みはかなり後退した。これは東京株式市場での出来高や外為市場でのドル円の取引高などからうかがえる。債券先物の取引高も3月末あたりから1日あたり1兆円割れとなる日が多くなっていた。
緊急事態宣言が解除されて、すぐに正常化するわけではないが、ディーリングルームのスタッフがそろってくるのも時間の問題とみられ、徐々に出来高が回復してくることが期待される。これによって顧客との取引も増えてくることが予想されるが、緊急事態宣言の解除が5月末となっていたこともあり、本格的な回復は6月以降となる可能性がある。
ちなみに日本の債券市場で、特に現物債の業者間の取引で多く使われる日本相互証券での取引でも電子取引は継続されていた。しかし、電話での取引が中断されていたようである。これが再開されると多少なり厚みも増してこよう。
そして何といっても金融取引は情報が命ともいえる。テレワークだとなかなか情報交換は難しい。これが再開されるとなれば、市場の流動性向上に寄与するのではないかとみられる。それでも飲みニケーションについては当面は控えられることが予想される。