円安の動きはむしろ警戒が必要に
日本時間の19日の夕方から早朝にかけて、円がドルやユーロなどに対して大きく下落した。ドル円は110円近辺から111円台半ばまで上昇した。ユーロ円は119円近辺から120円台半ばまで、ほぼ一方的に上昇した。
この間のユーロ円は方向感に乏しい展開となっていた。また、英国ポンドなどに対しても円は下落していたことから、この動きはドル高とかではなく円安の動きといえた。それではこの時間帯に何かしら円を売る材料が出たのかといえば、いまのところ見当たらない。
19日の米国株式市場は中国での感染拡大にブレーキが掛かっているのではとの見方や、中国政府による経済対策などへの期待もあって買われていた。米10年債利回りは1.56%と前日とほぼ変わらずとなっていた。ドル円は日米金利差によって動くことも多いが、米長期金利の動きが引き金とはなってはいない。
それではどうして円安が進んだのか。時間帯からみると欧米時間に相当し、特に材料がないとなれば、仕掛け的な動きによるものと思われる。ヘッジファンドなどが中国の新型肺炎拡大リスクからドル円を売っていたものの、思ったように下がらず、何故かこのタイミングでアンワインドを入れた、このあたりの可能性が高いのではなかろうか。新規の仕掛けでは、ここまでは動きづらい。
問題は、ではどうしてこのタイミングでアンワインドを入れたのか。
それは日本国内でのリスクが意識された可能性がある。日本の10~12月期のGDPが5四半期ぶりにマイナスとなった。これは予想されていたものではあったが、2020年1~3月期は回復し、マイナスは一時的との認識が強かった。
しかし、ここにきての新型肺炎によるサプライチェーンリスクやインバウンド需要の後退などから、1~3月期もマイナス成長となるとの見方も強まってきた。このあたりのリスクが意識されて円買いのポジションを解いた可能性がある。
この円安や米株の上昇を受けて、20日の東京株式市場は輸出関連株主体に買われていたが、結局、上げ幅を縮小させた。輸出関連株の今後の業績についても不透明感は強い。むろん、サプライチェーンリスクは一時的との見方もある。しかし、現状は国内での新型肺炎の拡大の可能性はこれからとなる。自粛ムードも強く、これも個人消費などに大きな影響も与えかねない。このあたりの状況を確認したいため、というのも今回の円安の理由かもしれない。
しかし、今回の動きをリスク回避のアンワインドだけという説明で片付けて良いものかは疑問も残る。国内での感染が拡大し、それが長引いた際のリスクも意識した動きであった可能性もある。20日の欧米時間でドル円はあっさりと112円台をつけ、ユーロ円は121円台に上昇している。この円安の動きはむしろ警戒が必要となろう。