イングランド銀行の次期総裁選びが始まった模様
英国の財務省は24日、2020年1月末で退任する予定のカーニー英イングランド銀行(中央銀行)総裁の後任を選ぶ採用活動に着手した。カーニー氏を選んだ前回12年と同じく、一般から幅広く探す公募の形式を取る(24日付日経新聞)。
英国政府は2012年11月26日に、英国の中央銀行であるイングランド銀行のキング総裁の後任にカナダの中央銀行であるカナダ銀行のマーク・カーニー総裁を任命した。総裁の任期は最大8年だが、カーニー総裁は早期の退任を前提に就任していた。EU離脱をめぐる混迷が深まるなかで退任時期を2度延期していたが、2020年1月31日には退任し、今回はカーニー総裁はこれ以上の延長はないとしている。
何故、イギリス人ではなくカナダ人のカーニー氏が英国の中央銀行の総裁に就任していたのか。当時の状況を振り返ってみたい。
当時の英国のオズボーン財務相はキング総裁の後任について、公募する方針を明らかにしたが、どうやらこれはいわゆる出来レースとなっていたようである。つまり、オズボーン財務相が白羽の矢を立てていたのは、そのときすでにカナダ銀行のマーク・カーニー総裁であったようである。
次期イングランド総裁候補にはタッカー副総裁が最有力とされていたものの、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題で関与が疑われたことがネックとなったようである。ターナーFSA長官との声もあったようだが、こちらも中銀保有国債の償却発言などがネックとなった可能性があった。
中央銀行総裁に外国人を起用するのは極めて異例であるが、これはある意味、イングランド銀行らしいものでもあった。実は1997年のイングランド銀行の改革により政府からの独立後最初のMPCメンバーにすでに2人の外国人が入っていた。また、以前には米国人のボーゼン委員がMPCメンバーに入っていたこともある。
総裁そのものに外国人を起用するというのは、結果的に当時の選出の責任者といえるオズボーン財務相は、なかなか思い切ったことをしたと思う。しかも、2月に就任を打診しても、カナダに住み続けたいとして就任要請を断ったとされるカーニー氏を、いろいろな待遇込みでなんとか口説き落としたとされている。
ちなみにカーニー氏には、イギリスとカナダの二重国籍を持つ奥さんと、娘4人がいる。イングランド銀行総裁になるにあたり、イギリスの市民権も取り二重国籍となっているようである。
現在の英国のハモンド財務相の意中の人はいったい誰なのか。英国のEU離脱問題は解決されるどころか、問題が先送りされただけであり、イングランド銀行の舵取りも非常に困難となるとみられ、総裁選びには今回も苦慮することも予想される。ちなみに基本年俸はカーニー氏と同じ48万ポンド(約7000万円)となる見通しだとか。