日銀は何故2%の物価上昇を目指しているのかが、わからない
日銀は7月31日に公表した展望レポートで2018年度の政策委員による物価見通しの中央値を1.3%から1.1%に下方修正した。2019年度も1.8%から1.5%に、2020年度も1.8%から1.6%に下方修正している。このように2%の物価目標達成はなかなか困難な状態にあるが、それでもなぜ日銀は2%という物価目標を目指すのか。
日銀の雨宮副総裁は8月2日の京都での講演において、『中央銀行の金融政策運営の基本的な使命は「物価の安定」を実現することであり、それをそのまま数字にすれば、前年比でプラス・マイナスゼロ%ということになるかもしれません。しかし、現在、先進国では共通して、物価安定の具体的な定義としては、厳密にゼロ%でなく若干のプラスが望ましいと考えられています』として、2%が望ましいと考えているのは何故なのか。
雨宮副総裁によると、『そのひとつは物価統計、例えば、多くの中央銀行が参照している消費者物価指数は、実際の物価よりも少し高めの数字を示しがちという「くせ」があるということです』との指摘である。
実際の物価とはどのようなものなのか、これもやや漠然過ぎてわかりにくい。また、例えば日本の消費者物価指数は帰属家賃の影響を受けやすく、これが消費者物価指数をむしろ低めにさせているとの指摘もある。日本と欧米の消費者物価指数の算出方法の違いもあり、それぞれに「くせ」も存在していると思われる。一概に消費者物価指数は、実際の物価よりも少し高めの数字を示しがちと言えるのであろうか。
第2の理由として雨宮副総裁が指摘したのは、『金融政策の「のりしろ」の必要性です』。
『デフレ方向に向かった場合に金融緩和で適切に対応できるよう、あらかじめ、プラスの物価上昇率とプラスの金利という一定の「のりしろ」を確保しておくのが望ましい』
「のりしろ」とはいったい何であるのか。そもそも金融政策とは、物価の安定を実現するためにあるのであれば、必要以上に物価や金利を上昇させる必要があるのか。FRBの利上げについても「のりしろ」を確保するためとの指摘もあるが、あくまでFRBの利上げというか正常化は、実体経済や物価に即した水準への引き上げであるとみている。必要以上に利上げを行うと引き締め策とも捉えかねなくなるのではなかろうか。
雨宮副総裁の見方がスタンダードなのかもしれないが、それでも日銀が2%という物価目標を掲げなければならない意味が私には良くわからない。そして本当に日本でも2%という消費者物価指数での水準が必要なのであろうか。