月中の長期金利の動きが過去最小?、凍り付いた日本の債券市場
5月の10年国債の利回り(一般的に長期金利と呼ばれる)の月中値幅がどうやら過去最小となったようである。5月日に0.015%をつけたがこれが利回りとしては月中最低となり、その後多少上昇したが、0.050%までとなっていた。つまり0.015~0.050%の動きとなっていたのである。長期金利は過去に前日比で0.2%以上も動いたときもあった。
なぜこれほどまでに国債が動かなくなってしまったのか。言うまでもなく日銀による長短金利操作付き量的・質的緩和政策によるところが大きい。日銀が国債を大量に購入することで長期金利の上昇を抑制している。さらにマイナス金利政策を導入したことで、長期金利もマイナスとなってしまったが、マイナス金利に対する批判が金融機関などから強まったことで、日銀は長め期間の国債利回りを上昇させて、イールドカーブをスティープ化させようとした。それが長短金利コントロールとなり、長期金利の目標をゼロ%程度と置いたのである。
長期金利の目標値をマイナスでなくゼロ%に置いたところがミソであり、つまり長短金利コントロールを導入したのは長期金利の居所をマイナスからゼロ%以上に引き上げて、さらに長い期間の国債利回りを引き上げることが目的といえた。
ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとも認識されて、3月2日に10年債利回りは0.150%まで上昇した。しかし、ここで日銀はブレーキを掛けるために「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。その水準は10年債利回りで0.110%となった。
つまり日銀の想定している長期金利のレンジは、ゼロ%近辺から0.100%近辺あたりと予想されることで、そのレンジ内での動きが続くこととなり、月中の動きも限られたものとなったのである。何かの材料、たとえば株価の急落や急激な円高などを受けて、10年債利回りがマイナスになる可能性もありうるが、大きな材料が出ない限りはマイナスとなることは考えづらい。
日銀はすでにステルステーパリングを行っている。長期国債の年間買入額の80兆円という数字は残しているが、すでに金融政策の操作目標は量ではなく金利に目標を置き換えたので量はあまり関係はない。そこで買い入れる量は現在、年間60兆円台ペースに落としている。
ところが10年債については今年度発行額の削減もあり、本来日銀としては買入の額を落としたいところが、3月に「指し値オペ」をせざるを得なかったこともあり、10年債利回りの動きに動揺を与えかねない減額はできずにいる。ただしきっかけがあれば、日銀は10年債の買入も減額させるのではないかと市場参加者はみており、そのきっかけのひとつとして10年債利回りのマイナス化の際なども想定している可能性がある。それで10年債をマイナス利回りにまで買い込むのを躊躇させている側面もある。
いずれにしても市場で動くはずの日本国債がほとんど動いていない。これは何か悪い影響を与えているわけではないように見えるが、それでもこのような相場が続けば債券市場の機能が失われることはたしかであり、潜在的なリスクが高まっているであろうことも確かである。