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金融政策によって長期金利をコントロールすることは可能か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

日銀はこれまで長期金利は操作できないとしていた。すでに更新されてしまっているが、日銀のサイト内に「日本銀行の金融調節を知るためのQ&A」というコーナーがあり、このなかで次のような説明がなされていた。

「金利は期間が長いほど、将来のインフレなどの経済情勢に関する予想や将来の不確実性に左右されます。しかし、中央銀行は、人々の予想や将来の不確実性を思いのままに動かすことはできません。また、このような期間の長い金利の動きから、市場参加者が将来のインフレ情勢等に関しどのような予想を持っているかを読み取ることも、金融経済の状況を判断するうえで非常に重要です。つまり、中央銀行が誘導するのに適しているのは、ごく短期の金利なのです。期間が長い金利の形成は、なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましいのです。」(以前にあった日銀のサイトから引用)

日銀は「長短金利操作付き量的・質的緩和」の決定もあり、上記の部分を修正し、それを「教えて日銀」と言うコーナーで金融政策によって長期金利をコントロールすることは可能なのですか、という質問に答える格好で説明している。

これに対する回答としてまず、「リーマン・ショック以降、まず米・英などの中央銀行が長期金利に働きかける政策を実施しました。短期の政策金利がゼロ%に達し、いわゆる「ゼロ制約」に直面する中で、更なる金融緩和効果を実現するために、長期国債等の買入れを通じて、長期金利を引き下げる政策を始めた」ことを説明している。さらに日銀も2013年4月に導入した「量的・質的金融緩和」では、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、大規模な国債の買入れを開始したと説明した。

「2016年1月に日本銀行が導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の経験から、マイナス金利と大規模な国債買入れの組み合わせが、長短金利全体に影響を与えるうえで、有効であることがわかりました。」

つまり結論として日銀は長期金利をコントロールすることができるとしている。大胆な金融緩和とマイナス金利により長期金利もマイナスに誘導し、「長短金利操作付き量的・質的緩和」によってイールドカーブのスティープ化も可能との認識である。

過去にできないとしていたことが結果としてできてしまったことにより、説明を修正した。これはある意味、現在の日銀の政策はこうした前提を替えないと矛盾が生じてしまうためでもあろう。果たして金融政策で長期金利はコントロールできるのか。それはこれから試されてくるものと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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