チャイナショックと中東情勢の混沌の原因
2016年は年明け早々に金融市場は世界的に波乱含みの展開となった。いくつかの要因が重なったことがその理由ではあるが、その要因の根底にあるものを探ってみたい。
1月4日の東京株式市場は売りが先行した。これは昨年30日から31日にかけて米国株式市場が下落したことに加え、サウジアラビアとイランとの国交断絶により、地政学的リスクが意識された。
米国株式市場は12月のFOMCでの利上げを織り込んではいたものの、その影響がここにきてじわりじわりと効いてきた可能性がある。
さらにサウジアラビアとイランとの国交断絶により、中東情勢が不透明となり、市場心理を悪化させた。スンニ派とシーア派の抗争ではあるが、ここに原油安の影響が絡んできている。原油安によるサウジアラビアの財政悪化に対する国民の不満も強まっていることで、そこにサウジ王家内の攻防も絡んで強硬手段に訴えた可能性がある。
東京株式市場は寄り付き後、いったん下げ幅を縮小させていた。ところが、発表された中国の12月の製造業PMIが予想を下回ったことをきっかけに、中国の株式市場が急落。これを受けて東京株式市場は再び下げ幅を拡大させて日経平均は600円以上の下落となったのである。
上海、深セン両証券取引所、および中国金融先物取引所では、主要株価指数が大きく動いた際に取引を停止する「サーキットブレーカー」制度を今年から導入した。それが早速機能した格好となり、まるで初日にテストを行ったような格好となった。
CSI300指数が5%下落したことでサーキットブレーカーが発動され、中国のすべての株価指数および株価指数先物が15分間取引を停止。再開後に7%下落したため、その日の取引は停止された。
はじめてのサーキットブレーカー制度の適用により、市場がさらに動揺した面もあるかもしれないが、今回の中国の株式市場の下落の背景には中国経済の低迷がある。世界経済の牽引役となっていた中国など新興国の急速な経済成長がピークアウトし、それが株価の下落に繋がり、また原油価格の下落要因のひとつとなっていた。
米国の利上げによって、金融市場での資金の流れに変化も出てきた。新興国から米国への資金の環流現象が起きていることも、今回のチャイナリスクの背景にあると考えられる。米国の利上げの背景には、米国経済の回復もあるが、それとともに異常な金融緩和の状態から正常な状態に戻すことも目的であった。過剰な金融緩和で世界経済を支えるような環境からの変化も今回の市場の動揺の背景にあることが考えられる。
新興国の経済成長のピークアウト、それも絡んだ原油安、さらに米国の利上げに象徴される金融政策の異常な状況からの離脱が、今回の金融市場の混乱の背景にあると考えられるのである。