Yahoo!ニュース

どうなるギリシャの円建て外債

久保田博幸金融アナリスト

ギリシャのチプラス首相と債権団との協議はいまだ決着が付かず、フランスのオランド大統領は合意の見込みはあるとの認識を示したものの、ドイツのメルケル首相は、協議は後退しつつあるようだと述べたそうである。ユーロ圏財務省会合(ユーログループ)は27日に再び会議を開く予定となっている。

このギリシャの債務問題、意外なところで日本にも影響が出る恐れがある。ギリシャ政府が抱える債務返済案件のうち、民間向けで最も早く期限を迎えるのが、7月14日の円建て外債(サムライ債)であった(日経新聞)。

国内で海外の発行者が発行する債券のうち、円建てで発行される債券が「円建て外債」であり「サムライ債」とも呼ばれる。1970年代から発行されており、2014年の円建て外債の発行額は2.5兆円を超えている。

1995年にギリシャの20年国債が円建てで発行されていた(9回債)。発行額200億円で、表面利率は年5.8%。1995年6月入札の20年日本国債の利率は3.7%であり、5.8%の利率は魅力的であったとみられ、国内の投資家が積極的に購入したとされている。

今回のギリシャの支援協議が合意できないと、この円建て外債もデフォルトとなる懸念が出てくる。金額が200億円ということで発行量はそれほど大きくないため、直接の影響は限定的とみられる。ただし、今後償還を迎えるギリシャのサムライ債もデフォルトとなる懸念が出てくる。ギリシャは1996年1月と8月にも20年物国債のサムライ債(12回、15回債)も合計700億円発行している。

注意すべきは2010年に発生したギリシャ危機により、ギリシャのサムライ債の価格が大きく下落し、さらには計画的なデフォルトが2012年に発生していたことで、金融機関によってはすでに保有するギリシャのサムライ債は売却していたところも多いはずである。現在保有している投資家は、かなりのリスクがあっても保有できる国内外投資家とみられ、その意味でも影響は限定的かとの見方もできる。ただし、間接・直接に関わらず個人投資家の保有もあるとみられ、こちらの影響は気掛かり。

サムライ債をめぐる過去のデフォルトは、たとえば2001年12月のアルゼンチン(1915億円)債がある。この際には元本が削減された上で、2005年に新債券と交換する手続きが実施された。ほかの事例としては、金融危機の影響に伴う2008年9月のリーマン・ブラザーズ債(1950億円)や2008年10月のアイスランドのカウプシング銀行債(780億円)がある。また、インドネシアの金融・不動産企業や中国のノンバンクの事例もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事