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9月の投資家の債券売買状況

久保田博幸金融アナリスト

日本証券業協会は9月21日に9月の公社債投資家別売買高を発表した。9月の債券相場はFRBのテーパリング開始の見送りもあり、10年債利回りは0.7%割れとなるなどしっかりした展開となっていた。

米10年債利回りは9月6日の東京時間に3%台に乗せ、6日の日本の10年債利回りは0.790%に上昇した。18日のFOMCでは現状の量的緩和策の維持を決定し、量的緩和縮小は先送りされた。これを受けて米10年債利回りは2.69%近辺と大きく低下し、19日の債券先物は144円台を回復した。現物10年債利回りも5月10日以来の0.7%割れとなり、20年債利回りも6月3日以来の1.6%割れとなった。

9月の公社債投資家別売買高によると、短期債を除いたベースで4月から8月まで売り越しとなっていた都市銀行は、9月も5506億円の売り越しとなっていた。ただし、国債の投資家別売買高を確認すると、中期債は1兆9381億円売り越していたものの、長期債は1兆2447億円の買い越し、超長期債も1104億円買い越していた。都銀の超長期債の買い越しは2月以来。中期債から長期、超長期債に乗り換えて、保有する国債の残存期間を長期化していた。

ここにきての都市銀行の動きをみると、長期債は買い越しの月が多いが、中期債は2月から売り越しが続いている。8月の中期債の売り越しは2兆円を超えていたが、9月も2兆円近い売り越しとなっていた。

ちなみに、6月の都銀の国債の売買高(除く短期)は3兆5165億円と2004年4月以降では最低となっていたが、ここにきて徐々に回復してきており、9月は10兆4974億円と4月以来の10兆円台となった。都銀の売買高の回復は、債券の流動性も徐々に回復しつつあることを示しているように思われる。

他の投資家の9月の売買状況を確認すると、買い越しの最大手は8月に続き信託銀行となり、1兆4986億円の買い越し。信託銀行は超長期債を4200億円、長期債を4716億円、中期債を5611億円それぞれ満遍なく買い越しとなっていた。

続いて生損保が8933億円の買い越しに。こちらは超長期債を6280億円の買い越し、長期債は109億円の売り越し、中期債は1139億円の買い越し。

投資信託が3137億円、農林系金融機関は3029億円の買い越し。投資信託は中期債主体、農林系金融機関は長期・超長期主体に買い越しとなっていた。

外国人は1282億円の売り越し。ただしその内訳をみると、超長期債を5859億円買い越し、長期債を1兆3059億円売り越し、中期債を5947億円買い越しとかなり大きな入れ替えを行っていた格好に。参考までに外国人の国債売買高(除く短期)を確認してみたところ、9月は15兆円台となっており、最近では4月の16兆円台に次ぐ大きさとなっている。

9月も都銀は売り越していたものの、売越額は減少しており、超長期債を買い越すなど少しスタンスに変化も見える。これにはFRBのテーパリング開始が先送りされた影響もあるとみられるが、10年債利回りの0.7%割れのひとつの原動力になったものと思われる。

参考までに国債の投資家別売買高(一覧)を基に、投資家全体の売買高の状況を確認してみたところ、7月は国債合計(短期債と割引債除く)で126兆9632億円となっていたが、8月は140兆円1549億円、9月は156兆1005億円と徐々に回復してきている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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